芸人後輩時代、ビビる大木氏は先輩から「スポーツ新聞を買ってこい」と頼まれるたびに何かできないかと考えていたという。ある日、新聞と一緒に購入したものを渡したとき、先輩芸人は「あ、いいね」と返事をしてくれたという。20代前半のビビる大木氏が気づいたこととは。

気づける人と気づけない人の決定的な違い

知識を授ける教育だけでは、いちいち上の指示を待ち、チャンスを逃す人間になる
教育のやり方を見ると(中略)単に智識を授けるということにのみ重きを置き過ぎている。(中略)実業の方では、軍事上の事務のように一々上官の命令を待っているようでは、とかく好機を逸し易い。
【『論語と算盤』教育と情誼】

 

■若手だった僕の買い出し体験!!

 

芸人の世界は、子どもたちにとって多くの「学び」がたくさんあるような気がします。僕たちの仕事は、己の生き様込みの総合力で切磋琢磨する仕事です。ボーっとすることが許されない緊張感のある現場です。

 

子どもたちだけではありません。将来、経営を任される企業の後継者である2代目、3代目の「若旦那」の方たちにも、叩き上げる厳しさ、体で覚える学びがありますので、もうお坊ちゃんでいるのが許されない世界です。親がいつでも介入できる現場ではありませんので、後継者を育てるには最適な場所だと思います。

 

芸人後輩時代の僕は、先輩から見たら一番の下っ端だったので、朝、先輩に会うたびに、「ちょっと大木、スポーツ新聞を買ってこい」とよく言われました。「わかりました」と走って買いに行きました。周りの後輩たちも同じように頼まれて、スポーツ新聞を買いに行きました。

 

僕はそういう光景を見ていて、「何かないかな?」と思っていました。頼まれているのはスポーツ新聞だと思いながら、「スポーツ新聞を買ってこい」と言われたので、「スポーツ新聞、買ってきました」ではあまりに芸がありません。

 

朝だったので、「プラス飲み物かな」と思いました。先輩が飲むか飲まないかわかりませんが、その先輩に飲むヨーグルトを買いました。朝だから、食べるよりは飲んだほうが楽そうかなと思ったからです。

 

スポーツ新聞を買い、先輩芸人に、「ちなみに飲むヨーグルトも、もしよければ」と言うと、「あ、いいね」となったんです。そのとき、僕は20代前半。「あ、ひょっとしたら、これが仕事なのかな」と感覚的にですが、とっさに思ったことを覚えています。

 

「このプラスアルファというのが、大事なんだ」「これが仕事なんだ」と思いました。頼まれたことはもちろん大事な仕事ですが、それは当たり前の話で、さらにプラスアルファで自分に何ができるかを考えることが、僕の仕事なんだと思ったのです。

 

そのことを「買ってきてくれ」というちょっとしたコンビニへの買い出しで気づかせてもらいました。気づかせてもらって、その1回の経験が、一生忘れられない教えに変わりました。

 

そうすると今度は先輩も、「大木はある程度わかって動いてくれるから」ということで、自分の仕事に呼んでくれるようになりました。

 

しかし、今度は自分が先輩になったときに、後輩芸人に教えることがとても難しいのです。後輩芸人に、「××買ってこい」と頼むと、その後輩芸人のいろいろな点に目がいってしまいます。自分が若い頃に気づいていたことが、後輩は気づけませんでした。

 

「20代の僕は気づいて動いていたけれど」ということが、たびたびありました。「あ、動けないんだ」という何か余計なことに気づき過ぎるので、どうも疲れてきます。後輩を育てることの難しさに直面している40代の僕です。

 

ビビる大木

 

 

※本連載は、ビビる大木氏の著書『ビビる大木、渋沢栄一を語る』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

ビビる大木、渋沢栄一を語る

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ビビる 大木

プレジデント社

歴史好き芸人・ビビる大木が、 同郷の偉人・渋沢栄一の遺した言葉を紐解く! 「はじめまして、こんばんみ! 大物先輩芸人と大勢の後輩芸人の狭間で揺れる40代『お笑い中間管理職』の僕。芸人としてこれからどうやって生き…

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