前回は、なぜ私募リートが機関投資家に選ばれるのかを説明しました。今回は、私募リートのリスク、中でも投資証券の商品性に関するリスクについて見ていきます。

Jリートと同様の流動性リスクが存在

私募リートにも、流動性に関しては一定のリスクが存在します。また、その他にも、リートとしてのリスク、すなわちJリートにも存在する一般的なリスクがあります。

 

それらは、大きく次のような形に分類することができます。

 

投資証券の商品性に関するリスク

 

②投資法人の運用方針に関するリスク

 

③投資法人の資金調達に関するリスク

 

④投資法人の関係者・仕組みに関するリスク

 

⑤不動産に関するリスク

 

⑥税制等に関するリスク

 

私募リートに投資する際には、これらのリスクについても十分な注意を払うことが必要です。そこで、以下ではそれぞれのリスクの中身について確認しておきましょう。

分配金の額は保証されているわけではない

①投資証券の商品性に関するリスク

投資証券の商品性については、分配金や収入及び支出の変動、新投資口の発行に関して以下のようなリスクがあります。

 

(1)分配金が変動するリスク

分配金は常に保証されているわけではありません。資産から得られる賃料収入の低下、損失の発生、現金不足等により、分配金が支払われなかったり、あるいはその額が減少していたりすることも起こりえます。

 

(2)収入及び支出の変動に関するリスク

投資法人が取得し保有する不動産からの賃料収入は、運用不動産の稼働率の低下、賃料水準の低下、テナントによる賃料の支払債務の不履行・遅延等により、大きく減少する可能性があります。テナント数が少ない不動産において、テナントの退去、テナントによる賃料不払いまたは遅延が生じた場合には、キャッシュフローに与える影響は大きくなります。

 

また、賃料収入の減少だけでなく、退去するテナントへの敷金・保証金の返還、多額の資本的支出、未稼働運用不動産の取得、売却損の発生による再投資の資金規模の縮小等により、投資主への分配金額または払戻金額に悪影響が及ぶ可能性があります。

 

さらに、運用不動産に関する減価償却費、公租公課、保険料、建物管理業務に関する費用、維持修繕費用及び借地借家料等の費用の増大や、運用不動産の売却にあたって売却損が生じた場合には、投資主への分配金額または払戻金額等の減少などの悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)新投資口の発行時の1口当たりの価値の希薄化に関するリスク

新投資口を発行した場合、つまりは増資を行った場合、新投資口の発行により既存の投資主の保有する投資口の持分割合が減少します。また、投資口の投資利回りが低下し、投資口の価値が下落する可能性があります。

 

なお、公開会社でない株式会社においては、株主総会決議による承認がある場合を除き、株主に新株の割当てを受ける権利が与えられます。しかし、投資法人においてはそのような権利はなく、投資主は、投資口の追加発行にあたり、投資口の保有比率にしたがって新投資口の割当てを受ける権利を有しません。

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