※写真はイメージです/PIXTA

2022年秋に開催予定の第20回党大会(20大)。習近平国家主席の3期目続投が確実視されているが、その一方、水面下では「様々な駆け引き」が活発化している様子もうかがえる。20大に向けて起こり得る政治シナリオを検証していく。

「五老二新」か「二老五新」か…常務委員の去就は?

習氏以外の現常務委員(6名)の去就は上記シナリオに大きく左右されるが、「七上八下」、つまり党大会時点で67歳以下なら常務委員入り(上)、68歳以上なら出る(下)としたこれまでの党の暗黙ルールに従うと(習氏の続投に合わせ、このルール自体が変更される可能性、また常務委員数を5名に減らすのではないかとの噂もある)、1955年生まれの李克強、汪洋、王沪寧、57年生まれの趙楽際の各氏が留任となる。

 

これを基に、習氏を入れて5名留任、2名が新たに常務委員入りする「五老二新」、55年生まれの3名は67歳となり、「全体の利益を考えて(顧全大局)」退任し「二老五新」、5名が新たに常務委員入りするなどのシナリオが噂されている。李氏が常務委員留任で、かつての李鵬同様名誉職の全人代常務委員長兼務となるか、完全引退するかが1つの焦点で、それによって、習、李両氏の真の関係が明らかになる。

 

首相後継については、汪洋氏や胡春華氏の名前が取り沙汰されている。8月、北戴河会議(注2)直後と思われるタイミングで、党中央・国務院が「法治政府建設実施綱要(2021〜25年)」なる文書を発出。5年前に発出された綱要に、「行政機構の責任者の独断専行(一言堂)を防止する」との文言が新たに追加された。

 

(注2)現指導層と長老が河北省の避暑地北戴河で行う夏季恒例の秘密会議。

 

これについて、習氏が自らの続投に反対する長老らを懐柔し3期目への移行を円滑にするため、あえて側近ではなく、団派出身で改革派とみられている汪氏や胡氏を次期首相候補としたうえで、首相が側近でなくても、自らの「定于一尊」を維持するため、(党組織ではなく)行政機構の責任者(つまり首相)の一言堂を許さないとしたとの解釈がある。

 

汪氏はこれまであまり目立たなかったが、北戴河会議後、習氏の代理でチベット(西蔵)に赴き解放70周年式典に出席。また「共同富裕」を新たな政治スローガンとしたことで注目された8月党中央財経委員会には、メンバーではないにもかかわらず、これまでのように「列席」、つまり単なる参加ではなく、習氏と李氏に次ぐ扱いで「出席」したと報道されるなど、にわかに脚光を浴びている。

 

汪氏と李氏は同年齢だが、過去、後任首相の年齢が前任より上(老上幼下)だった例もある(注3)汪氏は団派といってもその中心人物ではなく、また胡氏ほど胡錦濤元国家主席に近くない。習氏としては、対峙する団派勢力を分断するにはかっこうの人物かもしれない。一部には習氏の後継として浮上したのではないかとの見方も出たが、団派であることや年齢(習氏より2歳だけ下)を考えてもそれは考え難い(注4)

 

(注3)趙紫陽は前任の華国鋒より3歳上、朱鎔基氏は前任の李鵬よりわずかだが歳上だった。

 

(注4)香港地元紙明報が2021年8月25日付で「汪洋が習後継に浮上」とする記事を掲載。親中色の強い多維新聞は同日付記事で直ちにこの可能性を否定した。

 

他方、おとなしく控えめな性格と言われる胡氏は習氏にとって扱いやすく、なにか事が起こったときに「背黒鍋」、背中が黒くなる→責任をかぶってくれる人物で、「胡首相」は史上最弱の首相誕生を意味するとの声がある。なおこれまで、副首相が首相に昇格している例は多いが、首相の常務委員序列が3位より下になったことはない。

 

5月党政治局学習会で、習氏は国際社会との対話で改善すべき点として、「自信を示すと同時に謙虚であること、国際社会から信頼され、愛され、尊敬されるイメージを形成するよう努力すべき」として対外的融和姿勢を示す一方、上記9月の中央党校での講話では、聞き手が異なることもあろうが、国際情勢がかつてない変革期にあり、中国が直面するリスクが増大しているとして、「幻想を捨て、勇敢に闘争せよ。原則上の問題では一歩も譲歩するな」と強硬姿勢を強調。いずれ対外宣伝活動に不満を持っていることをうかがわせる。

 

対外宣伝担当の王沪寧氏は江沢民氏以来、3人の国家主席に仕えた「三代帝師」、つまり三代にわたる皇帝の師の異名を持つ党の理論的支柱。江氏の「3つの代表」、胡錦濤氏の「科学発展観」、習氏の「中国夢」「習近平思想」などすべて王氏の考案で、戦狼外交も王氏の振り付けと言われる。元来裏で暗躍することを好み、政治的に狡猾だがその知恵を表に出さない(深藏不露)性格で「不眠症の仕事狂」などと称されている。

 

表舞台に姿をみせることは少ないが、6月下旬、歴史展覧館歴史展開幕式あいさつでは、「偉大闘争、偉大事業、偉大な夢」など「偉大」を10回も繰り返しての「棒習」だった。「習氏との不仲説を否定した」「いや、これは習氏に対する手の込んだ一種の皮肉(高級黒)」などの声がある。本来であれば王氏が就任すべき党史学習教育領導小組(チーム)の長に黄坤明中共中宣部長が就任しており、11月の19期六中全会で採択された党史上第3の「歴史決議」(注5)も黄氏が担当したとの情報もある。王氏がその権力を維持しているのか、習氏との関係でなんらかの変化が生じているのか要注意だ。

 

(注5)六中全会(11月8〜11日)で採択された「党百年奮闘の重要成果と歴史経験に関する決議」、党史上第3の通称「歴史決議」は、第1、第2の「歴史決議」が「歴史教訓」「歴史的是非」を論じた上で過去の指導者の路線を批判したことと異なり、「歴史経験」を総括して習氏の功績を持ち上げた。6中全会の直前、国営新華社通信が1万2000字超の習氏の功績をたたえる長文を掲載、党機関紙の人民日報も同様の記事を掲載したことと合わせ、習氏3期目続投を確実にすることが狙いで、それ以外では、過去の歴史決議のような重要性はないとの評価が多い(海外華字誌各誌)。

 

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