「1つの側面」のみで判断してはいけない
自分が購入しようとしているエリアがどんな地域なのか、需要と供給のバランスや人口などは、しっかり自分で調べるべきです。「〇〇さんがそう言っていたから」というのは、信じない方がいいと思います。
地方圏では、「天気予報に出てくるような大きな都市を買いなさい」と言う有名投資家、不動産コンサルがいますが、「大きな都市は、需給が崩れている場合が多いので、あえて外すべき」という意見もあります。まったく逆ですが、両方から実感を伴った話として聞いています。
実際のところ、地域の需要というのはさまざまで、物件タイプによる需要と供給のバランスというのもあります。
ファミリータイプの需要があるのに、供給が少ないエリアというのもあります。逆に大きな団地があってファミリー向けは余っており、単身者向けの需要があるエリアもあるのです。
やはり、一つの側面では判断してはいけませんし、誰かの言うことを検証もせずに、そのまま鵜呑みにするのは避けた方がいいでしょう。
本来、このデータを出すのも、不動産業者の仕事です。筆者の会社を含め、CPM®資格を所持しているプロがいる会社では、こういったデータを全て提供します。そうでない会社で物件購入する場合は、自分でしっかり調べる必要があります。
人口ではなく「世帯数」を見ることが大事
ここでは私たちが行っているエリア分析のノウハウをお伝えします。まずは大枠として、その地域の概要を知ること、「地域市場」の調査です。
当社では、『都市データパック』を使って、かなり細かいところまで全部データを出して確認しています。この『都市データパック』はプロの業者が使うものですが、資料としては大変役に立っています。
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都市データパック
東洋経済新報社から発売されている冊子『都市データパック』は、豊富な社会・経済データと独自調査による多彩な地域情報で全国806市区を多面的に紹介しています。統計データも充実しており、オリジナル指標の「住みよさランキング」など各種ランキングも掲載されています。
他に結構使えるのが、ウィキペディアなどのインターネット情報です。駅やその地名を入力すると、おおよその情報などが出てきますので、一般の方がその市場を調べるというのも、そんなに難しいことではないと思います。
続いてのステップで「近隣市場」のリサーチを行います。
多くのサラリーマン投資家が物件を所有している地域は、融資が出やすいという特徴がありますが、投資家は同じような営業努力をするので、結局のところ価格競争に行きついてしまいます。
それが、主要駅から2駅くらい離れると、一気に投資家が減って、地元の農家など地主さんとの戦いになる。そうなれば、投資家が勝てるチャンスがあります。
投資家はやる気も知識もありますし、空室に投資することに対して理解があります。地方の地主さんでは、昔の意識が抜けず、入居者が決まるまでリフォームをしない―そんな意識の低さもあります。
このように同じ市内であっても少しエリアがずれるだけでマーケットが変わるというケースは少なくありません。わかりやすい例でいえば、神奈川県の横須賀市は人口も世帯数も減っていて、市の情報だけみると、とても投資に適したエリアとは思えません。
それが、横須賀中央という駅に限って言えば、非常に投資に強い街なのです。このように同じ地域でも大きな差があるのが賃貸マーケットなのです。
エリア分析はこのように市の単位で調べる「地域市場」からはじめて、次に「近隣市場」、最後に「対象物件の特徴」と3段階に行っていきます(下記図表参照)。
[図表]市場の視覚化
大事なことは、人口ではなく世帯数を見ることです。これが居住系不動産分析において必要なことです。