(※写真はイメージです/PIXTA)

販売手数料の高さから、銀行などが積極的に勧誘している「外貨建て保険」。商品性が難解なこともあり、契約後トラブルに発展するケースも少なくありません。複雑な商品にもかかわらず、高齢者はなぜ外貨建て保険に手を出してしまうのか。朝日新聞経済部でかんぽ生命の不正販売問題も担当した柴田秀並氏が、保険勧誘の「禁じ手」を使ってまでセールスする銀行員と、「よく理解しないまま」契約してしまった高齢者との間に起きた事例を紹介します。※本記事は、柴田秀並著『生命保険の不都合な真実』から一部抜粋・再編集したものです。

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「外貨建て保険」勧誘…リスクを隠す銀行員

夫が亡くなり保険金を受け取った女性に、「外貨建て保険」の誘いが…

「定期預金で置いておくよりも良い商品がありますよ」

 

2017年の初夏。都内に住む70代後半の伊藤俊子さん(仮名)は大手信託銀行の女性行員から、こんなうたい文句で勧誘された。

 

その年の春に夫が亡くなり、生命保険の死亡保険金4500万円を受けとった。それまで夫の相続対策などで付き合いのあった女性行員に何気なくその話をした。彼女が自宅を訪ねてきたのは、それからほどなくしてだった。

 

長年連れ添った夫は、病死直前まで働いていた。夫の死により伊藤さんの現金収入は年金くらいになったので、死亡保険金として入ったお金は投資ではなく、おもに余生の生活資金に充てるつもりだった。それでも、伊藤さんは漠然と「そのまま預金に置いておいても仕方ないのかな」と思っていた。

 

そんな伊藤さんに、女性行員が提案した商品は一つだけだった。

 

豪ドル建ての一時払い保険。ポエムのような商品名とは対照的に、商品性は難解だった。その中身は損保系の生保が発売した保険商品で、まず契約通貨を米ドルか豪ドルかのどちらか選ぶ。その後は満期が来るまでに「生存給付金」と称して、定期的にお金が振り込まれる。自分で使ってもよいし、「生前贈与」として受取人を家族にしてもよい、というものだった。

 

一見安心感を誘う「手書きメモ」のワナ

「わかりやすいようにこれをつくってきました」

 

後日、内容をよく理解できない伊藤さんに対して、女性行員は手書きメモを持参してきた。

 

「プランの概略」と書かれたそのメモには、油性ペンで「自分年金」と書かれている。

 

定期的に「生存給付金」が支払われること、「生前贈与」として受け取り人を孫に変更できること、万が一の場合は長女にあたる「お嬢様」に保険金が支払われることなどが、わかりやすく示されていた。蛍光ペンを使い、視覚的にもイメージしやすくなっている。

 

「安心感」を一見誘う資料だが、為替変動による「元本割れリスク」や「多額の手数料」など、商品の持つ「不都合な真実」は一切、書かれていない。最初に円から豪ドルに変換することさえ、そのメモでは触れられていなかった。

 

「預金よりもお金が増えますよ」「満期までにお金が何回か定期的に振り込まれ、生活費に充てられますよ」

 

女性行員のこうした説明もあり、伊藤さんは最終的に「自分の老後の生活資金には都合が良いかな」と感じた。

 

円ではなく豪ドルで運用することは理解できた。心配だったので、念のため「損をすることはあるのか」と聞いた。すると、女性行員は「私が見ていて、損がないような時期を選びます。そのときに円に替えて下さい」と話したという。

 

伊藤さんは2017年8月、夫の死亡保険金全額と預金の一部を加えて、この保険の契約を結んだ。保有する金融資産の6割以上にのぼるものだった。

 

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生命保険の不都合な真実

生命保険の不都合な真実

柴田 秀並

光文社

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