●前年のコロナによる業績低迷の反動で、製造業、非製造業とも、大幅な増収増益傾向が継続中。
●企業による2021年度の業績予想は上方修正の動きが顕著だが市場の予想値には届いていない。
●決算は総じて良好だが日経平均30,000円台回復はサプライチェーンの混乱収束が1つのカギに。
前年のコロナによる業績低迷の反動で、製造業、非製造業とも、大幅な増収増益傾向が継続中
足元では、国内企業による2021年4-9月期の決算発表が続いています。11月5日までに決算発表を終えた、東証株価指数(TOPIX)を構成する3月期決算企業(金融を除く)は、752社に達しましたが、全体の企業数でみると、まだ56%程度にとどまっています。そこで、今回のレポートでは、ここまでの決算発表の途中経過と、それを受けた株価の反応について検証します。
はじめに、2021年4-9月期の実績を確認すると、前年同期比で売上高は17.2%増、営業利益は109.4%増、経常利益は127.4%増、純利益は157.8%増となっています。4-6月期も大幅な増収増益でしたので、コロナの影響で業績が大きく落ち込んだ昨年の反動が、依然続いているとみられます。また、製造業、非製造業いずれも、順調な業績の回復傾向がうかがえます(図表1)。
企業による2021年度の業績予想は上方修正の動きが顕著だが市場の予想値には届いていない
次に、企業による2021年度の業績予想について確認します。業績予想を公表している企業について、入手できるデータに基づき集計したところ、前年度比で売上高は7.4%増、営業利益は32.2%増、経常利益は31.0%増、純利益は59.1%増という見通しが示されました(図表2)。
業績予想の改定率は、順に+1.6%、+4.4%、+8.5%、+14.4%であり、全体として上方修正の動きがみられます。
まだ途中経過ではありますが、とりわけ純利益の改定率が2桁のプラスとなっていることは、株価に好材料と思われます。しかしながら、2021年度の業績予想について、市場の予想値と企業自身の予想値との乖離率をみると、売上高は-0.9%、営業利益は-6.7%、経常利益は-8.5%、純利益は-6.5%となっており、企業自身の予想値は、市場の予想値に届いていない状況です。
決算は総じて良好だが日経平均30,000円台回復はサプライチェーンの混乱収束が1つのカギに
次に、進捗率を確認します。進捗率とは業績予想に対する実績の進捗度合いを示すもので、一般に、売上高や純利益などの四半期累計値を、企業による通年度の業績予想で割って求めます。4-9月期の場合、進捗率は50%が目安となりますが、11月5日時点で、売上高は48.6%、営業利益は53.9%、経常利益は58.0%、純利益は60.9%でした。経常利益と純利益の進捗率は、製造業よりも非製造業の方が高くなっています(図表1)。
なお、日経平均株価の動きをみると、決算発表が本格化する前の10月22日から11月5日までの期間、2.8%上昇していますが、まだ30,000円台の回復には至っていません。今回の決算では、サプライチェーン(供給網)の混乱が業績に影響したとする企業も多くみられたため、この先、混乱が収束に向かえば、日経平均株価が30,000円台を回復して水準を切り上げる、1つのきっかけになると思われます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年4-9月期決算の途中経過と株価の反応』を参照)。
(2021年11月9日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト