野垣クリニック 野垣岳志 院長

お尻の問題は非常にデリケートであり、治療を受けたとしても人には言いづらいところがあります。それだけに、同じ治療を受けた者同士、独特の連帯感が生まれることがあるといいます。「お尻がつないだ縁」にまつわる人間模様を、『野垣クリニック』の院長である野垣岳志氏に、ユニークなエピソードとともに紹介してもらいました。

上司が「手術した方がいい」と後押し

ある若い患者さんが、「お尻の周りが腫れてきてどんどん痛くなってきた。夜も眠れないぐらい痛くなった」と言って受診されました。肛門周囲膿瘍という状態で、すぐに切開処置を行い溜まっていた膿を出しました。

 

私の所では切開処置は局所麻酔下に行なっているため大変申し訳ないけれどもそれなりの痛みが伴います。膿を出してしまうと楽になります。

 

肛門周囲膿瘍はほとんどの場合「痔瘻」という病気に起因するため、後日痔瘻の手術が必要となる場合が多いのですが、この手術を2通りの方法で行なっています。「局所麻酔下での日帰り手術」か、「下半身麻酔下での入院手術(8日間入院)」かを本人に選択していただく形にしています。

 

局所麻酔の場合は麻酔も手術も一定の痛みを伴いますが日帰りで家に帰れて、翌日から仕事に復帰することが可能な点で優れています。多くの場合は痔瘻手術前に肛門周囲膿瘍の切開処置を行なっているため、ある意味それが判断基準となります。局所麻酔下での切開処置がとても痛くて辛かった場合には、下半身麻酔下での手術を選択されることがあります。

 

日帰り手術と入院手術の件数は、毎年だいたい同じくらいの比率となります。この若い患者さんは切開処置がとても辛かったため入院手術を希望されましたが、実は入社してまだ1ヵ月の状況だったため、なかなか上司に2週間程度休みを下さいと言い出しにくいとの事でした。それでももう局所麻酔は辛いとのことで勇気を振り絞って上司に相談したところ、実はその直属の上司も、同じ職場の先輩も、私が痔瘻の手術を行なった患者さんでした。

 

同じ痛みを共感してもらうことができて、すんなりと休みをくれたそうです。手術を受けるかどうかについても本人が迷っていたら、上司と先輩が相談に乗ってくれて、「手術して本当に楽になったから手術した方がいいよ」と背中を押してくれたそうです。今でもその3人で痔瘻についての話をよくすると言っていました。

これからも「お尻愛」の精神で

手術をするということは身体に損傷を与えるわけであり、ともすれば症状が悪化してしまう事もあります。手術後の結果について満足していただけない場合ももちろんあります。そんな中、治療を受けられた方から薦められたと言っていただけると医者冥利に尽きるものがあります。

 

「手術して良かった」って言ってもらえると、こちらとしても「手術して良かった」と心の底から思います。これからも「お尻愛」の精神で頑張ってまいります。
 

 

 

野垣 岳志

野垣クリニック院長

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