今回は、堅実な経営を続ける食品卸売業のM&A事例を見ていきます。※本連載は、起業支援NPO、金融コンサルティング・M&A・不動産・投資教育事業会社などを多数運営する、佐々木敦也氏の最新刊『中小ベンチャー企業経営者のための“超”入門M&A』(ジャムハウス)の中から一部を抜粋し、実際の中小ベンチャー企業のM&Aを例にとり、M&Aを中小企業経営成功の切り札にする方法を解説します。

父から受け継いだ会社を磐石にした2代目社長

【甲社2代目社長】

長年食品卸売業を手掛ける甲社は、2代目代表取締役であるF氏の父親が創業した会社である。F氏は大学卒業後、食品系商社に入社。父親の会社を引き継ぐ日に備えて、様々な職務の経験や人脈作りに励み、実力をつけていった。38歳の時、ついに創業者父より会社を引き継いだ。

 

その後、父親の堅実な経営スタンスを継続し、得意分野である魚の切り身を中心に主要顧客の公的機関へ商品を供給する展開を行い、業界における地位を確実なものにした。

 

健康不安からひそかに検討を始めた「会社売却」

その後も堅調な売上を維持し、社員は15名に増えた。また堅実経営が功を奏し、借入金もなく純資産も年々積み上げていくことができた。

 

しかし、F氏が55歳の時、あまりにも長い熱が続いたため、検査を受けることとなった。早期の肝臓がんであった。手術は成功し、命に別状はなかったものの、F氏は大きなショックを受け、再発し自分がいなくなった場合の会社、社員はどうなるのかなど、今まで考えたことのない不安に襲われた。

 

F氏は病気のことを妻だけに話し、とりあえずは社員には隠して仕事を継続した。そして、F氏はこれを機に甲社売却を真剣に検討し始めた。

M&Aアドバイザーを通じて知り合った社長と意気投合

しかし、いきなり売却となると混乱を招き、最大の資産である社員が動揺して流出してしまっては台無しとなる。また、会社取引先はF氏への信頼によるものが多かった。社員流出により価値を棄損することなく、売却後も継続的な取引確保ができるよう信頼できる売却先が必要であると考えた。

 

そのようなことを考えている頃、丙M&Aアドバイザーより事業提携の依頼話が舞い込んできた。

 

それは東海地方に本社がある同業の食品製造・卸売会社、乙社であり、そのS社長は創業者で、業界の革命児とも呼ばれていた。最近は事業チャンネルの枠を超え、飲食業の進出も果たし、もう一段の発展を目指している。公的機関などの顧客拡大や商品ラインアップを強化できるような安定したパートナーを探しており、この目的に合致する甲社に大きな関心を持っているとの話であった。将来的には買収も見据えた提携を希望しているとのこと。

 

F氏は自身の病気のことは伏せたうえで、乙社の社長S氏と面談することとした。面談を通じて、F氏はS氏のこれまでの実績や経営方針に良い印象を持ち、さらにS氏とF氏は学生時代の囲碁が同じ趣味であることがわかり、さらに話が盛り上がった。

 

この話は次回に続く。

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