インフレはインフレ
しかしながら、インフレはインフレです。
家計は「供給制約だから、財・サービスは値上げされても止むを得ず、僕らは、それをカバーするだけの賃上げは要求しない」とはなりません。企業は「供給制約だから、原材料価格は値上げされても、僕らは、それを価格に転嫁しない」とはなりません。
原材料の価格上昇は実際に起きており、企業経営や生計を考えれば、値上げや賃上げに波及しない理由・保証はありません。まして(確かに1960年代の財政赤字=需要増も影響しましたが)、1970年代を思い出せば、供給要因によってインフレは高進したわけです。
ほとんどのセントラルバンカーや(筆者のような)評論家たちは、インフレを経験したことがなく、過去40年のディスインフレの中をずっと生きてきたわけですから、彼らの「インフレは一時的」との主張を「うのみ」にすることは最も避けられるべきことです。
過去40年を超えて歴史を調べるか、懐疑的になってポジションを分散させることが望ましいでしょう。レイ・ダリオの口癖は「私の人生では初めてでも、歴史上は何度も起きていることがたくさんある。それを知ることで備えられる」というものです。
中間選挙を考慮して“behind the curve”に陥るリスク
ちなみに筆者は、最初の利上げを「来年12月」と考えています。来年11月には中間選挙を控えることから、政治に配慮して選挙直前(9月や11月)には利上げをせず、最初の利上げは選挙後になると思われます。
[図表]でも確認できますが、「来年12月の利上げ」は、今年9月のFOMC四半期見通しで示されたタイミングとほぼ同じです。一方で、マーケット(フェデラルファンド金利先物)は、インフレの高止まりと労働市場の更なる改善を見越し、最初の利上げを「来年9月頃」と見ています。
マーケットは今夏以降、ボトルネック(供給制約)によるインフレの長期化を見ており、パウエル議長も先月末になってようやくこれを認めました。インフレが長期化する中で、FRBが政治に配慮したり、上記の「経済理論」に固執したりして利上げを遅らせれば、FRBは“behind the curve”に陥り、マーケットや家計によるインフレ懸念はさらに高まる恐れがあります。
インフレ懸念は、長期金利の上昇と株価下落に直結する恐れがあり、ポートフォリオは十分な分散が必要でしょう。
重見 吉徳
フィデリティ投信株式会社
マクロストラテジスト
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