未利用地の売却等で出資金を捻出
新たなBプライベートカンパニーの設立とその株価対策、そして次男への生前贈与が今回
のコンサルティングの大きな山場です。順を追って説明しましょう。まず、低利用地・未利用地の売却で得た資金1億円を出資して、Bプライベートカンパニーを設立しました。
次に、このBプライベートカンパニーが2億円で中古の賃貸マンションを購入しました。出資金1億円との差額(不足分)は金融機関から借り入れました。設立したばかりの法人には通常、金融機関は融資してくれませんが、出資者であるEさんの個人的な資産背景を説明し、1億円の借り入れは問題なくできました。
購入した賃貸マンションは、立地と収益性はまずまずなのですが、築20年を超えて修繕コストがかかるようになってきており、また不良入居者がいたり、デザインがいまひとつなど改善点がたくさんありました。そこで、そうした問題点を解決してから、賃貸経営の経験のない次男にBプライベートカンパニーを贈与しようという計画を立てました。
例えば、管理会社を代えて不良入居者と交渉してもらい、また賃貸マンションに詳しい設計事務所を入れて建物設備の修繕やエントランスのデザインの見直しなどを行いました。これによって、2〜3年すると正常に賃貸経営が回り出してきました。
次はいよいよBプライベートカンパニーを次男に贈与する段階です。贈与税を計算したところ、なんとゼロになりました。理由は、時価2億円に対し、相続税評価が7000万円、一方、ローンが8000万円残っていたので、株価がゼロになっているからです。
全株を次男の名義に書き換えましたが、贈与税の申告も不要で、4年目からは次男の会社となりました。ただし、次男は賃貸経営の経験がなく、現在は会社勤めなので、引き続きEさんが社長を務め、役員報酬もEさんが受け取っています。オーナーは次男、経営はEさんというように、所有と経営を分離しているのです。
資産を個人から切り離すメリットとは?
Eさんとしては、やがて次男が賃貸経営ができるような環境が整えば社長の座を譲り、役員報酬も次男のものにしたいと考えています。このように、相続財産を個人から法人へ切り離すことにより、次男に資産と所得が移せることになったわけです。贈与税がかからなかったことはオマケといっていいでしょう。
これで将来、次男としては面倒臭い屋敷などの資産管理は長男に任せながら、そこそこ安定した所得が得られ、不自由はしないはずです。次男のケースでうまくいったので、さらにEさんは今、Cプライベートカンパニー、Dプライベートカンパニーをつくり、もう少し小ぶりの収益不動産を購入した上で、同じように生前に長女、次女に株式を贈与しようと計画しています。
一方、もともとあるAプライベートカンパニーは長男に相続させる予定です。今のうちに個人名義の他の資産も切り離してAプライベートカンパニーに移しつつ、同時にAプライベートカンパニーの株の持ち分を少しずつ長男に移しています。このように、資産を個人から切り離し、プライベートカンパニーへ移しておくといろいろな面で相続対策がしやすくなります。
ある程度、贈与税や譲渡税はかかるかもしれませんが、分割対策の道筋が立ちやすく、資産全体の収益性をアップすることも可能になってきます。なお、Eさんはこうして相続対策にめどが立ち、今では多少の余裕も生まれ、海外不動産に興味が出てきました。
そこで、プライベートカンパニーの事業の一環として、海外不動産の見学ツアーにちょくちょく参加しています。旅費や滞在費は経費で落ちるので、喜んでいらっしゃいます。