賃貸経営と「自宅にかかる相続税」に悩むEさんの事例
Eさんのお父さんが存命中、東京都内に賃貸マンションを購入し、相続税をある程度減らすことはできていたのですが、やはり賃貸経営は大変で、その後は空室率の上昇、家賃の下落、修繕費の増加に頭を悩ませています。
一方、神奈川県にある屋敷は先祖代々の本宅ですが、普段は誰も住んでおらず、まさに固定資産税の塊であり、相続税を押し上げることもEさんは重々承知です。それでも、地元の名士である一族の象徴であり、今後も何としても守っていきたいという強い意向をEさんはお持ちです。私たちから見た課題は、次の3点に集約されました。
①すでにお父さんの相続前に収益不動産をかなり購入しており、これ以上借金や物件を増やすことには無理がある
②相続税の総額は約3億円、配偶者控除利用後で約1億5000万円かかる
③低利用地、未利用地が多いので有効活用が急務である
そこで、低利用地、未利用地を売却して他の資産に組み替えるとともに、長男以外の子どもへの相続財産の生前贈与を行うという方針を立てました。
プライベートカンパニーで株価対策と争続対策を実施
実際の相続対策は次のように行いました。
①財産診断の実施
いつものとおり、名寄帳(固定資産評価の一覧)、確定申告書、ローン返済表、案内図をEさんから預かり、財産診断を1週間で行いました。
②相続税の算出
すばやく概算で算出しました。前述のとおり、総額で約3億円、配偶者控除を満額使うと約1億5000万円になる見込みでした。預貯金があまりなく、万が一、今すぐ相続が発生すると、神奈川県の屋敷を売却しなければならない可能性もあるということを説明し、覚悟を決めていただきました。
③相続財産の収益分析と不良資産・優良資産の判別
相続財産の収益性をネット収入(NOI)、総資産利益率(ROA)などの利回りの指標をもとに分析し、不良資産と優良資産に分けました。また、単純な利回りだけでなく、Eさんの意向を踏まえて神奈川の屋敷、都内の自宅、収益不動産は現状維持とすることに決定。一方、低利用地・未利用地は基本的にすべて売却することにしました。
④プライベートカンパニーを新設
低利用地・未利用地の売却を1年ほどかけて進め、売却代金のほとんどは、従来からあるAプライベートカンパニーではなく、新たに設けたBプライベートカンパニー(同族会社)への出資金に回しました。このBプライベートカンパニーは、株価対策を講じた上で生前に次男に贈与し、将来の相続時に遺産分割でもめない布石にするためのものです。