●21日の日経新聞報道や、24日の参院補欠選を受け、日経平均は下落、与党苦戦は売り材料。
●株式市場は情勢調査に一喜一憂する状況にあり、選挙結果をまだ十分に織り込んでいない模様。
●自民党の議席数が焦点、長期政権への期待が高まれば医療、介護、システム開発などに再注目。
21日の日経新聞報道や、24日の参院補欠選を受け、日経平均は下落、与党苦戦は売り材料
第49回衆議院議員総選挙の投開票が10月31日に迫っています。そこで、今回のレポートでは、衆院選終盤の情勢を確認し、現時点で株式市場がどのような展開を織り込んでいるのかについて考えます。また、主要政党が公約として掲げている政策を改めて比較、検証し、仮に実施された場合、どのような業種にとって追い風となるのか、想定される動きを探ります。
日本経済新聞社は10月21日付の朝刊で、衆院選の公示直後に実施した情勢調査において小選挙区で自由民主党(以下、自民党)が優勢なのは5割程度だったとし、野党の共闘戦略に一定の効果があったと報じました。また、10月24日投開票の参議院静岡、山口両選挙区の補欠選挙において、自民党は静岡選挙区で敗れ、1勝1敗となりました。なお、日経平均株価は10月21日と25日に下落しており、与党苦戦は売り材料とみられます。
株式市場は情勢調査に一喜一憂する状況にあり、選挙結果をまだ十分に織り込んでいない模様
その後、朝日新聞社が10月25日付の速報ニュース(18時)で、情勢調査において自民党が単独で過半数を大きく上回る勢いの一方、立憲民主党はほぼ横ばいと報じると、日経平均株価は翌26日、上昇で反応しました。もちろん衆院選の情勢だけが、日経平均株価の方向性を決めるものではありませんが、時期的にかなり材料視されやすいということは十分に考えられます。
ただ、与党の議席数を巡る思惑に、株価が一喜一憂する状況を踏まえると、株式市場は選挙結果をまだ十分に織り込んでいないと推測されます。予想される選挙結果と日本株およびドル円の反応については、10月20日付レポートでまとめていますが、自民党が勝敗ラインとする「与党で過半数(233議席)」は、自民、公明両党で72議席減らしても達成できるため、それほど高いハードルではないように思われます。
自民党の議席数が焦点、長期政権への期待が高まれば医療、介護、システム開発などに再注目
衆院選では、やはり自民党の議席数が注目点とみられますが、衆議院解散時は276議席でしたので、44議席以上減らすと単独過半数を失います。なお、主要政党の公約は【図表】の通りです。
自民党の議席数次第では、長期政権への期待が高まり、政策との関連性から医療、介護、保育、教育、システム開発、ITサービス・コンサルティングなどの分野に改めて注目が集まる公算が大きいと思われます。
政権交代の場合、野党の政策が政局不透明感を払拭できるかが焦点となります。立憲民主党は、年収1,000万円程度までの個人を対象に、所得税を一時的に実質免除するとしており、消費税率の時限的な5%への引き下げも合わせると、減税の規模は18兆円超になる見通しです。コロナの収束次第ではレジャー関連の消費増もある程度見込まれ、また、カーボンニュートラルの政策推進は、再生エネルギー事業の追い風になると考えます。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『衆院選直前~日本株を見通す上での確認事項』を参照)。
(2021年10月27日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト