妊娠してもそれで終わりではない
私が不妊治療を続けていく中で、そして今も、必ず続けている習慣がある。
それは「ありがとう」と、夫に伝えること。
「なんでわかってくれないの?」と思うこともたくさんある。不妊治療をしていると、「命とは」「子供がいる意味」「家族の意味」「夫婦のあり方」など普通の家族が時間をかけて直面していく様々なことに、一気に直面する。
「そこまでして、どうして子供を欲しいと思うのか」
「子供が欲しいと思うことは自分のエゴではないか」
「夫と一緒に子育てしていけるだろうか」
「自分に子育てができるのだろうか」
自信満々に、これらに正解できる人は、多くないだろう。なにより、正解なんてない。
不妊治療は、妊娠して「成功」だけれども、それで終わりではない。むしろ、「始まり」でもある。
妊娠中は、様々なトラブルの可能性もあるし、仕事をどうするのか、を考えなければならない。3時間おきの授乳、寝不足、離乳食……いろんなことがある。
このコラムは、有り難いことに今回で9回目を迎える。不妊治療に興味がある人や不妊治療中の女性だけではなく、いつも、不妊治療に関わるパートナーである男性や、子育て中の妻を支える男性にも是非読んで欲しい、と思っている。
不妊治療には、当然ながら、夫婦の協力は必須である。どちらかが欠けても、成功はない。
けれども、お互いがお互いの気持ちに寄り添って、「ありがとう」と言う気持ちを相手に示すことで、先の見えない孤独や、人には相談できない葛藤を、少しでも癒せるのではないだろうか。
山下 真理子