(写真はイメージです/PIXTA)

外出自粛や在宅勤務で夫婦や家族が一緒にいる時間が増え、価値観の違いなどが顕在化し、離婚に至るケースが増えています。離婚により配偶者から分与された財産には、通常、贈与税はかかりませんが、分与財産額が、婚姻中の夫婦の協力で得た財産額や貢献度などの事情を考慮し、多すぎる場合は、その多すぎる部分に贈与税が課せられます。岡野雄志税理士事務所の岡野雄志税理士が「コロナ離婚」した熟年夫婦の事例をもとに、ポイントを解説します。

分与財産や慰謝料に贈与税が課せられるケースも

Tさんのご主人は、管理職として定年を迎え、同企業に役員として再雇用されたのち、3年前に退職。当初は仲間とゴルフをしたり、旅行に出かけたりと、退職後の生活を楽しんでいました。しかし、このコロナ禍です。ご主人の行動は制約されました。

 

外出自粛で家にいても、何をするわけでもありません。今まで、家庭内のことは専業主婦の奥様に任せっきりでしたので、家事を手伝う気もありません。せめてゴミ出しでもと奥様が頼めば、「ゴミ袋なんか下げて表に出られるか!」と怒鳴ります。

 

コロナ禍の巣ごもり生活でストレスが溜まったせいか、ご主人はますますキレやすくなったと奥様は感じています。奥様にしても、これまで家事や育児を一身に引き受け、老後は好きな趣味でも楽しもうと思っていたのに、それどころではありません。

 

すでに家庭を持っている娘さんにSNSで愚痴ると、意外な答えが返ってきました。「もう、お父さんと別れてもいいんじゃない? お母さんは主婦という役目を果たしてきたんだから、財産分与してもらって、シニアマンションにでも引っ越したら?」

 

若くして結婚以来ずっと専業主婦で、手に職のない自分には離婚して自立生活なんて無理だろうとあきらめてきた奥様。しかし、娘さんのいうとおり、そろそろ主婦という仕事は退職を願い出て、退職金として財産分与を受け取ってもいいはずです。

 

離婚により配偶者から分与された財産には、通常、贈与税はかかりません。ただし、分与財産額が婚姻中の夫婦の協力で得た財産額や貢献度などの事情を考慮し、多すぎる場合は、その多すぎる部分に贈与税が課せられます。また、相続税や贈与税を免れる目的とみなされる場合は、分与された財産すべてに贈与税が課せられます。

 

気をつけなければいけないのが、分与財産の中に土地や建物などがある、つまり自宅などの所有不動産がある場合です。Tさんのケースでは、自宅の住宅ローンはすでに完済し、ご主人名義となっていますので、選択肢は以下になるかと思われます。

 

1. 自宅を売却し現金で財産分与

 

売却価格が購入時より高ければ、その差額に「譲渡所得税」が発生し、ご主人に課せられます。「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」は夫婦間には適用不可ですが、離婚後に売却すれば適用可能です。ただし、離婚による財産分与の申立ては離婚から2年以内が期限となります。

 

2. 自宅評価額に基づき現金で財産分与

 

Tさんのご主人が自宅に住み続ける場合、この方法が考えられます。自宅は時価で評価し、夫婦共有の財産ですから評価額の1/2の現金を代償金として分与するのが一般的です。

 

このほか、分与財産のほとんどを自宅が占める場合、ご主人が奥様に自宅を譲渡する方法も考えられます。その際、離婚前に自宅を贈与すれば「おしどり贈与」が適用でき、基礎控除110万円プラス最高2000万円まで控除可能で贈与税が節税できます。

 

また、自宅以外の財産で充分に分与できれば、奥様がご主人から自宅を買い取る方法もあります。しかし、奥様は自宅所有を望まず、むしろ転居を希望しています。そこで、Tさんの場合は、ご主人から奥様への自宅譲渡という選択肢は省かれました。

 

なお、不動産のほかにも、有価証券や美術品など、購入時より評価額が値上がりする可能性があるものを財産分与する場合、「譲渡所得税」が発生することがあります。Tさんの場合は、ゴルフ会員権がそれにあたりました。

 

離婚というと連想しがちな慰謝料ですが、不貞行為などによる「精神的苦痛に対する損害賠償金」で、財産分与とは異なります。慰謝料にも贈与税はかかりませんが、社会通念上、過分な額だったり、相続税・贈与税逃れとみなされたりすれば、贈与税が発生します。また、不動産が含まれれば、「譲渡所得税」が発生する可能性があります。

 

財産分与は夫婦の話し合いで決定できますが、ケースによって発生する税金も異なり、想像以上に複雑です。予め専門家に相談されることをおすすめします。また、夫婦間でまとまらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることになります。

 

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