タワーマンションで本当に相続税の節税ができるのか?

本連載は、相続を中心に個人の資産に関する業務に力を注いでいる株式会社ウーマンタックスの代表取締役、板倉京税理士の著書、『相続はつらいよ』(光文社)の中から一部を抜粋し、「評価を下げて相続税を減らす」タイプの節税対策を紹介します。

相続税の節税は「相続対象となる財産を減らす」こと

「税金なんてできれば払いたくない。うまい節税方法があるなら、是非実行したい」――多くの方はそう思っているのではないでしょうか。筆者も税理士という仕事をしていながら、税金を払う時はカナシイ気持ちになります。

 

ましてや、相続税ともなると、一生のうちに一度払うか払わないかの大きな税金です。節税対策をするのとしないのとでは大きな違いが出てきます。とはいっても、金の延べ棒を床下に隠すとか、現金を壺に入れて土の中に埋めるなどといった「脱税行為」をしてはいけません。誰にも後ろ指をさされることのない「正しい節税」を目指しましょう。

 

相続税の節税とは、簡単にいえば「相続の対象になる財産を減らす」こと。減らす方法は、

 

①使って減らす

②評価を下げて減らす

③あげて減らす(生前贈与)

 

の3つに分かれます。①「使って減らす」とは、文字通りの意味。じゃんじゃん使って、亡くなるまでにちょうどいい感じで財産がなくなれば、相続税はかかりません。とはいえ、使いすぎて老後資金が足りなくなっては困ります。また、「使い切れないほど持っているわ」というセレブな方の場合、この方法だけでは節税対策として不十分でしょう。

 

そこで、本連載では「評価を下げて減らす」節税対策を見ていきます。正しい節税対策には正しい知識が必要です。また、節税ありきの対策で、かえって残される家族に「つらい」思いをさせてしまうこともあるのです。そんな話も紹介していきたいと思います。

タワーマンションを買い漁る富裕層の狙いとは・・・

相続税の計算をする時、現預金以外の財産、たとえば不動産や自動車、ゴルフ会員権、有価証券などをいくらとして評価するのかは、財産の種類ごとに決められています。

 

2億円の現金を持っていれば2億円に対して相続税がかかりますが、2億円で買った他の財産は2億円の評価とは限りません。2億円で買った財産が、もっと低い評価額になるということは多々あるのです。このように、買った金額と評価額の差を利用したのが「評価を下げて減らす」節税というわけです。

 

「某上場会社の社長さんが2億円くらいのタワーマンションを買いたいと言っているんだけど、いい物件がないんですよね」と知り合いの不動産屋さんがボヤいていました。――なんでも、ここ数年富裕層がタワーマンションを買い漁っていて、よい物件がなくなってきているのだそうです。

 

それにしても2億円とは・・・。世の中にはお金を持っている人がいるものです。しかもこの方たちは、自分で住むための物件を探しているわけではありません。お金持ちがタワーマンションを買いたがる理由、それは「タワーマンションは相続税の評価額がものすごく低い」と言われているからなのです。

 

特に、都心など地価の高い場所にある中古のタワーマンションの高層階は節税効果が高いと人気なのだそうです。どのくらいの節税が見込めるのかは物件にもよりますが、仮に2億円のマンションを買った場合、相続税評価額が1億円以下になる可能性もあります。もしそうなれば、これまた税率にもよりますが、5000万円近く相続税を減らせる可能性があるのです。こんなおいしい話なら、富裕層がタワーマンションを買い漁る気持ちもわからなくないですよね。

売買価格より相続税評価額が低くなる理由

なぜそんなことが可能なのか? それは不動産の評価方法に秘密があります。不動産は相続税の評価額が低いのです。たが、不動産は建物と土地に分けて評価します。建物の評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されている「固定資産税の評価額」です。

 

この価格は、建物の構造によって建築費の5〜7割程度となります。仮に1億円かけて造った建物であれば、その評価額が5000万〜7000万円になるということです。建物は古くなるほど評価額が下がります。中古物件の評価はもっと低くなるということです。

 

一方、土地の値段は、国が定めた「路線価」を基準に計算しますが、これは売買取あ引時価の8割程度と言われています。仮に1億円で土地を購入すると、その評価額は8000万円程度になるというわけです。しかもマンションの土地は戸建だてに比べ、1戸あたりの土地の持ち分は多くありません。特にタワーマンションともなると、敷地面積あたりの戸数が多いので、土地の持ち分がかなり少なくなります。

 

ですから、中古のタワーマンションは相続税の評価額が低いのです。でも、都心の中古マンションは、びっくりするくらいの高値で取引されているものもたくさんあります。その結果、購入した価格よりも相続税の評価額がうんと安くなるというわけです。特に高層階は、低層階よりも市場価格は高いのに相続税評価額は変わらないため評価差額が大きく、人気があるそうです。

 

【図表 タワーマンション節税】

タワーマンション節税が否認されたケースも

でも、最近このタワーマンション節税に黄色信号が点っています。売買価格と相続税評価額が、あまりにも乖離しすぎていることに、当局が目を付け始めたのです。

 

そもそも相続税において、財産を評価する時の基本的な考え方は「時価」です。ただ、不動産の時価を調べるのは困難だろうということで、「路線価方式」などの評価方法が採用されているのです。そんな中で、時価とあまりにもかけ離れたタワーマンションが節税目的で売れまくっていると聞けば、国も放っておくわけにはいきません。

 

過去には、相続の直前に約3億円で購入したタワーマンションを6000万円と評価して相続税を申告した相続人に対し、「マンションは当時の売買価格で評価しなさい」と申告のやり直しをさせた判例もあります。ただし、このケースは相続後まもなくこのタワーマンションを購入価格とほぼ同額で売却している、ちょっと特殊なケースのため、この判例をもってタワーマンション節税が必ず否認されるという話ではありませんが・・・。

 

今後どのような流れになるのかはわかりませんが、節税対策としてタワーマンションを買うことには、そういったリスクがあることを知っておいていただきたいと思います。それでも「タワーマンション節税にチャレンジする!」という方は、仮に相続税対に役立たなくなったとしても、「いい資産を買ったんだから問題ない」と思えるような物件を購入されることをおススメいたします。

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    WTパートナーズ株式会社 代表取締役
    WT税理士法人 代表社員
    税理士 

    成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒業後、保険会社勤務を経て、税理士資格取得。朝日税理士法人などで経験を積み、平成17年独立。
    平成21年、女性開業税理士で組織された㈱ウーマン・タックスを設立、代表取締役就任。平成30年、WTパートナーズ株式会社に名称変更。「相続問題など、家庭やお金の問題には女性の視点が役に立つ」との思いから相続を中心に個人の資産に関する業務に力を注いでいる。税理士業務以外に、NHKあさイチなどのテレビ出演や、各種講演・セミナー、執筆活動なども精力的に行っている。一児の母。
    主な著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)、『親と一緒に考えるかしこい相続』(日本経済新聞社)がある。

    著者紹介

    連載財産の「評価を下げて減らす」相続税対策

    本連載は、2016年6月20日刊行の書籍『相続はつらいよ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    相続はつらいよ

    相続はつらいよ

    板倉 京

    光文社

    相続のルール、遺産分割、相続税、節税対策、生前贈与…身近な人が亡くなる前に知っておきたい基本的な対策を敏腕税理士がやさしく伝授。 親族が元気なうちにやっておくべきこととは? 相続問題でよくある落とし穴とは? 知ら…

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