今回は、「金の仏像の購入」が相続税対策として有効かどうかを見ていきます。※本連載は、相続を中心に個人の資産に関する業務に力を注いでいる株式会社ウーマンタックスの代表取締役、板倉京税理士の著書、『相続はつらいよ』(光文社)の中から一部を抜粋し、「評価を下げて相続税を減らす」タイプの節税対策を紹介します。

墓地や墓石、仏壇、仏具、祭具には相続税がかからない

以前ちょっとテレビに出させていただいたことがあります。そのとき番組の中でゲストだった石田純一さんに「金の仏像を買うと相続税の節税になるって聞いたんですけど、本当ですか?」という質問をされました。最近、そんな都市伝説(?)がまことしやかに流れているようです。

 

そもそも、なぜ「金の仏像が相続税の節税になる」と言われているのかというと、「墓地や墓石、仏壇、仏具、祭具など日常的に礼拝をしているもの」には相続税をかけない、という決まりが相続税法の中にあるからです。

 

確かに、お墓や仏壇などは、基本的に相続税がかかりません。最近はお墓の値段がとても高くなっています。夫の実家でも以前墓地を購入しましたが、数百万円もすると聞いて驚いたものです。仏壇も高いものは相当な金額になるでしょう。こういった「高価だけれど、相続税はかからない」ものを生前に購入するだけで、相続税の節税対策になります。これも「評価を下げて減らす」節税です。

 

仮に200万円の墓地を生前に購入した場合、200万円の相続財産を減らすことができるのですから、相続税率が10%の人であれば、20万円。50%の人であれば、100万円近くの節税が可能になるかもしれないのです。

 

相続が済んだ後にこの話を聞いて、「え〜知らなかった。そんなことなら、親に生前にお墓を買っておいてもらえばよかった」とがっかりする方がいらっしゃいますので、相続税がかかりそうで、まだお墓もお仏壇も持っていないという方は、前向きに検討していただければと思います。

 

最近は、相続税対策にかかわらず、ご自分好みの墓石を生前に作る方も増えているようですし・・・。

「仏像の形をした金は課税対象

話を金の仏像に戻しますと、「墓地や仏壇や仏具・祭具などが非課税なのだから、金の仏像を買って『これは仏具です!』といえば、相続税がかからないに違いない‼」と思いついた人がいるというわけです。

 

しかし、残念ながら、金の仏像は非課税にはなりません。税務署の方からみれば、金の仏像は、「仏像の形をした金」にすぎないのです。「ウルトラマンの形をした金」みたいなものです。もし金の仏像に相続税がかからないのであれば、「家じゅう金の仏像だらけ」なんてお宅が出現したかもしれませんね。

 

――以上のお話を石田さんにお伝えすると、石田さんがすかさず、「じゃあ、金の仏像を買って、毎日毎日その金に向かって手を合わせて祈ったらどうでしょうか?」と質問されました。

 

石田さん、そんな言い分が通るわけがありません! そんなことで相続税が安くなるなら、私だって毎日金の仏像に手を合わせますよ。「相続税が安くなりますように〜。な〜む〜」。

 

結論は、「墓地や仏壇・仏具などは相続税の課税対象とはなりません。ただし、骨董的価値があるなど投資対象となるものや、商品として所有しているものを除く」ということ。そんなにうまい節税話はないということです。

本連載は、2016年6月20日刊行の書籍『相続はつらいよ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続はつらいよ

相続はつらいよ

板倉 京

光文社

相続のルール、遺産分割、相続税、節税対策、生前贈与…身近な人が亡くなる前に知っておきたい基本的な対策を敏腕税理士がやさしく伝授。 親族が元気なうちにやっておくべきこととは? 相続問題でよくある落とし穴とは? 知ら…

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