「借金」を活用した相続税対策が有効とは言い切れない理由

今回は、「借金」を活用した相続税対策が有効とは言い切れない理由について見ていきます。※本連載は、相続を中心に個人の資産に関する業務に力を注いでいる株式会社ウーマンタックスの代表取締役、板倉京税理士の著書、『相続はつらいよ』(光文社)の中から一部を抜粋し、「評価を下げて相続税を減らす」タイプの節税対策を紹介します。

やみくもに「借金」をしても相続税は減らせない

十年来のお客様から、たびたび聞かれる質問があります。

「先生、借金をすると相続税の節税になるんですよね」

 

このお客様同様、多くの方が「借金」=「相続税の節税」と思っているようです。

 

「借金をすると相続税が安くなる」というのは、ある意味正しいのかもしれません。プラスの財産の合計とマイナスの財産の合計の差額が、相続税のかかる財産の額となりますから、マイナスの財産(借金)が多いほど、相続税がかかる財産は減るわけです。この理屈から「借金をしたら相続税が減る」と考える気持ちはわかります。

 

でも、やみくもに借金をしたからといって、相続税が減るわけではないのです。

 

考えてもみてください。借金をすると現金が手に入ります。5000万円を持っている人がいるとしましょう。その人が2000万円の借金をして、2000万円の現金を手に入れたとしたら、プラスの財産は5000万円の現金+2000万円の現金=7000万円。ここから2000万円のマイナスの財産(借金)を差し引くと、残りが5000万円。結局、相続税がかかる財産は増えも減りもしないということになります。

 

「借金をしたら、相続税が減る」というのは、借金をして手に入れた財産の相続税の評価額が借金の額よりも低い場合、節税になるという意味なのです。やはり節税のためには「評価を下げて減らす」必要があるのです。

 

借金をして不動産を買うのであれば、借りたお金の額>不動産の相続税評価額とすることが可能になり、相続税の節税になります。先ほどの5000万円を持っている人が2000万円借金をして、相続税評価額1000万円の不動産を購入したとします。そうすると、5000万円の現金+1000万円の不動産=6000万円(プラスの財産の合計)。ここから2000万円のマイナスの財産(借金)を差し引くと、残りが4000万円。これで、1000万円の財産が減らせたことになります。

 

でもこれは、節税対策という意味では「現金で不動産を買う」という行為と同じこと。5000万円持っている人が、2000万円の現金を支払って(なくして)相続税評価額1000万円の不動産を取得するのであれば、現金5000万円-2000万円+不動産1000万円=4000万円の財産となります。ね、同じですよね。

節税額より利息の支払いが高額になる場合も・・・

ここで言いたいのは、「借金をすれば相続税が安くなると思い込んで、必要もない借金をしないようにしていただきたい」ということです。借りたお金は返さなければいけませんし、利息も付いてきます。

 

仮に2000万円を借りるにあたって、金利を3%固定、返済期間を20年間に設定した場合、20年間に払う利息の額は約660万円です。これ以外にも、手数料や保証料などなどの経費がかかります。これでは、節税できた額よりも利息の支払い額などのほうが高かったなんてことにもなりかねません。

 

ちなみに、借金をすると所得税の節税になるという話もよく聞きますが、これもちょっとマユツバものです。確かに、事業のために借金した時の利息は経費になります。しかし返済する額のうち、元本部分については経費にはなりません。利息部分だって、払った分だけ税金が安くなるわけではないのです。

 

仮に、所得税と住民税の税率が合わせて50%という高額納税者であれば、払った利息の半額分は税金が安くなるでしょう。仮に年間100万円の利息を払っていたら、50万円税金が安くなるということ。もっと税率の低い人、仮に20%の人だと100万円の利息に対しても節税になるのは、20万円。いや、そもそも税金をほとんど払っていないという人もいるのですから、そういう人はたいした節税にもならないでしょう。結局借金をすれば、多少の節税になったとしても、利息を払う分、持ち出しが増えるのです。

 

といっても、借金が悪いというわけではありません。この項の冒頭でお話しした十年来のお客様は、かなり高額な相続税が予測されています。ただ、そのために不動産を買うにしても、手元の現金で一括で支払ってしまうと、後々相続税の納税に窮してしまいます。ですから、高額な不動産を購入したりするような場合は、借入金で取得しておいたほうがいいということになります。

 

「相続税対策で借金をしようかな」などとお悩みの方は、よくお考えになっていただければと思います。

WTパートナーズ株式会社 代表取締役
WT税理士法人 代表社員
税理士 

成城大学文芸学部マスコミュニケーション学科卒業後、保険会社勤務を経て、税理士資格取得。朝日税理士法人などで経験を積み、平成17年独立。
平成21年、女性開業税理士で組織された㈱ウーマン・タックスを設立、代表取締役就任。平成30年、WTパートナーズ株式会社に名称変更。「相続問題など、家庭やお金の問題には女性の視点が役に立つ」との思いから相続を中心に個人の資産に関する業務に力を注いでいる。税理士業務以外に、NHKあさイチなどのテレビ出演や、各種講演・セミナー、執筆活動なども精力的に行っている。一児の母。
主な著書に『夫に読ませたくない相続の教科書』(文春新書)、『親と一緒に考えるかしこい相続』(日本経済新聞社)がある。

著者紹介

連載財産の「評価を下げて減らす」相続税対策

本連載は、2016年6月20日刊行の書籍『相続はつらいよ』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続はつらいよ

相続はつらいよ

板倉 京

光文社

相続のルール、遺産分割、相続税、節税対策、生前贈与…身近な人が亡くなる前に知っておきたい基本的な対策を敏腕税理士がやさしく伝授。 親族が元気なうちにやっておくべきこととは? 相続問題でよくある落とし穴とは? 知ら…

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