(※写真はイメージです/PIXTA)

「その場所にあるはずのないものが見える」。そう聞くと、多くの人は精神疾患や脳機能の異常、薬物による症状を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし何らかの疾患や異常がなくても、見えないはずのものが見えるという現象は起こりえます。知られざる「シャルル・ボネ症候群」について眼科医の平松類先生に聞いてみました。

「見えないはずなのに見える」は十分ありえる現象

シャルル・ボネ症候群は特に高齢の方に多いのですが、緑内障・網膜色素変性症・黄斑変性・網脈絡膜萎縮などによって起こる方がいます。つまり特定の病気によってのみ引き起こされるものではありません。高齢の方だと、年齢のこともあって認知症などを疑われてしまうケースもあります。認知症の中にも、幻覚を伴うことのある「レビー小体型認知症」という種類があります。そのため認知症の疑いがある場合は、医師の正確な診断によってチェックすることが必要になります。

 

あるはずのないモノを認識するという現象は、目だけで起こるわけではありません。よく知られる現象として「幻肢」というものがあります。これは不幸にも手や足を切断してしまった人が、まるで手や足があるような感覚を覚えるという現象です。

 

幻肢もまた脳が原因ではないかと言われています。なくなった手や足があるかのように脳の信号が伝わってしまっている。しかし思うように手足を動かせないために、結果として痛みを感じてしまう患者さんもいます。

 

見えないはずのものが見えるという現象はありうることだとお話しすると、ほとんどの患者さんは安心してくれます。見えないものが見えたとしても不安なく生活される方が多いです。それでも気になる方の場合は、ストレスが一因となるという報告もあるため、ストレスの除去をしたり解消法を提案したりすることもあります。とはいえ見えなくなってきていること自体が大きなストレスの原因であるために、なかなか解消は難しいというのが現実です。ですができることをしっかりやって、患者さんの苦痛を取り除いてあげるということが、医師に、そして家族にもできることかと思います。

 

 

平松 類

眼科専門医・医学博士

二本松眼科病院 副院長

 

 

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※本記事は、最先端の「自分磨き」を提供するウェルネスメディア『KARADAs』から転載したものです。