「痛くないから大丈夫」⇒放置して大変なことに…太ももの付け根にできる「柔らかい膨らみ」や「腫れ」の正体【医師が解説】

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「痛くないから大丈夫」⇒放置して大変なことに…太ももの付け根にできる「柔らかい膨らみ」や「腫れ」の正体【医師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

太ももの付け根部分にできる「ふくらみ」を放置してはいませんか? 押したら凹み、横になると引っ込むのであれば、その正体は「鼠径(そけい)ヘルニア」です。鼠径ヘルニアの具体的な症状やリスクについて、新橋DAYクリニック院長・岡村正之医師が解説します。

鼠径ヘルニアとは?

鼠径ヘルニアとは、加齢などで鼠径部(太ももの付け根の部分)の筋膜(筋肉などを包み込んでいる薄い膜のこと)が弱くなり緩んだ結果、腹圧がかかったときに腸が飛び出してしまう疾患です。一般的には“脱腸”という呼び方がお馴染みかもしれません。

 

症状としては、太ももの付け根の部分にできる柔らかい膨らみや腫れです。押したら凹み、横になると引っ込むのが大きな特徴です。鼠径部の筋膜には構造上弱くなりやすい部分が3ヵ所あり、そこが加齢によって脆くなり、内臓を支えられなくなることで発症すると考えられています。

 

小児にもよく見られますが、成人では40代以降の中高年男性の発症が多く、なかでも腹圧がかかりやすい立ち仕事や力仕事をされている方、肥満の方が多数を占めています。

 

治療には手術が必要で、放置して自然に治ることはありません。

鼠径ヘルニアを放置するとどうなる?リスクと注意点

この鼠径ヘルニアですが、症状が進むと違和感や不快感が出ますが、痛みは出ないこともあります。放置しておくと徐々に大きくなり、男性の場合には、膨らみが陰嚢に達することもあります。

 

また、嵌頓(かんとん)と言って、腸が挟まれて血流が止まると、腸が壊死して命に関わるリスクが高まります。このような状態は緊急手術が必要となるため、症状があれば早期の診断と治療が大切です。

治療を踏みとどまる理由

鼠径ヘルニアは、その名前は一般的に知られているものの、具体的な症状やリスクについては十分に認識されていないことが多いです。そのため、症状が現れても、何だかわからず治療を踏みとどまる方が少なくありません。他にも次のような事情が考えられます。

 

<仕事や生活の忙しさ>

現代社会は、情報が溢れ、何かと忙しい日々を送っている人が多いでしょう。仕事や家庭のこと、趣味や自分の時間など、多くの要因が日常に求められます。その中で、「下腹部のふくらみ」や「違和感」といった、鼠径ヘルニアの初期の症状は、他の日常的な小さな体調不良と同じように捉えられがちです。下腹部という場所ゆえ、なかなか身近な人に相談もできず、仕事や家庭の事情などで、なかなか病院に行く時間が取れないという実際の事情も影響しています。

 

<入院の手間や負担>

鼠径ヘルニアの治療法は手術のみです。多くは病院で数日間の入院が求められることが一般的でした。入院は、患者本人だけでなく、家族や仕事関係にも大きな影響を及ぼします。また、経済的な負担や日常生活の中断、プライバシーの問題など、入院に対するネガティブなイメージが、治療を避ける大きな要因となっています。

「日帰り手術」という選択肢

そんな忙しい現代人に知ってほしいのが日帰り手術です。日帰り手術は、その名の通り、手術当日に帰宅し、自宅での回復を目指す手術方法です。近年、医療技術の進歩とともに、この日帰り手術が多くの疾患に対して導入されています。息切れがひどく歩けないほど心臓や肺に大きな病を抱えていたり、血が止まりにくいなどといった疾患がある方を除けば、多くの方が日帰り手術の恩恵を受けることができることから、鼠径ヘルニアの治療においても日帰り手術は大きな魅力を持つ選択肢となっています。

 

手術と聞くと身構える方も多いと思いますが、しかし実際は、腹腔鏡手術の進化により身体への負担を大幅に軽減した低侵襲手術と、適切な麻酔による痛みと覚醒のコントロールにより、約4時間の滞在で治療が完了します。

 

日帰り手術を可能にするのが、腹腔鏡を使用した低侵襲(ていしんしゅう)手術です。在来法である鼠径部切開手術でも日帰りすることは可能ですが、すぐ日常生活に復帰する必要がある現代人には、傷が小さいことにより身体へのダメージが抑えられる腹腔鏡手術が適しているでしょう。腹腔鏡手術は5mmの傷で行うことができます。

 

かつて腹腔鏡手術は、メリットが大きいものの時間がかかる手術といわれていました。しかし現在では執刀経験豊富な外科医師も増えています。例えば当院では、症例にもよりますが片側30~40分程度と、手術法による手術時間に大きな違いはありません。

 

日帰り手術は術後1時間ほど回復室で過ごし、おおむね来院から4時間ほどで帰宅となります。帰宅後は食事制限もなく通常の生活に復帰でき、重い荷物を持つことや激しい運動を除けば、手術翌日から就労制限、行動制限はありません。時間を合わせられれば半日休で鼠径ヘルニアの治療が可能となります。

鼠径ヘルニアは早期治療が重要

鼠径ヘルニアは、その初期症状やリスクが十分に理解されていないため、多くの方が治療を踏みとどまっていると言われています。しかし放置することで悪化し、最悪の場合は命に関わるリスクが考えられるため、早期の治療が重要です。

 

ビジネスの世界でも、リスク・ベネフィットの評価という考え方があると思いますが、将来にわたるリスクを放置するのではなく、積極治療をすることで生活の質を向上できると考えれば、手術に踏み切る方も増えるのではないでしょうか。

 

身体への負担が少ないだけでなく、時間やスケジュール、仕事への影響を最小限に抑え、かつ将来にわたる不安やリスクを払拭してくれる鼠径ヘルニアの日帰り手術は、日々忙しい生活を送る現代人にとって、とても有効な手段と言えるでしょう。受診すべきかどうか迷っている方、決心がつかない方は、まずは相談してみることをおすすめします。

 

 

岡村 正之

新橋DAYクリニック 院長

日本専門医機構認定麻酔科専門医

 

国立山梨大学を卒業後、横浜市立大学、国立循環器研究センターで一般麻酔、心臓手術麻酔、集中治療等を研修し、茅ヶ崎市立病院、藤沢市民病院、戸塚共立第1病院を経て、2020年より日帰り手術専門施設での麻酔に関わる中で、日帰り手術における麻酔科医の役割の重要さを改めて認識し、日本初の麻酔科医が代表を務める鼠径ヘルニア日帰り手術専門クリニックである新橋DAYクリニックを2022年4月開設、院長に就任。

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