1990年代初め、バブル経済崩壊後に訪れた「就職氷河期」。消費を抑えざるを得ない就職氷河期世代のなかには、もはや「節約」という言葉では片づけられない状況へ身を置いている人もいる。日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏がデータをもって指摘していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
40代で手取り10万円台も…「就職氷河期世代」を取り巻く厳しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

未婚者の介護は貧困につながりやすい

親の介護から子の側が受ける影響は、介護する側の家族構成やどれだけ働けるかによる経済状況によって左右される面も大きい。そこで、総務省「国勢調査」から団塊ジュニア世代の、2015年時点(41~44歳)における配偶者の有無、就業状況、親との同居・非同居をそれぞれみると、いくつかの特徴が挙げられる([図表4]参照)。

 

資料:総務省「国勢調査」 注:その他は、親との同居や就業状況が不詳など。
[図表4]団塊ジュニア世代の配偶者の有無、就業状況、親との同居・非同居別人口(2015年、41~44歳) 資料:総務省「国勢調査」
注:その他は、親との同居や就業状況が不詳など。

 

男性では、配偶者がいる人が237万人おり、そのほとんどは就業者で親と同居していない。一方、未婚者は配偶者がいる人の4割を超える104万人おり、6割強の66万人が親と同居し、そのうち14万人は非就業者である。これに対して、女性においては、配偶者がいる人が257万人おり、そのうち約7割は就業者である。

 

もっとも、専業主婦とみられる非就業者も約3割いる。そして、男性と同様に親と同居しないケースがほとんどである。一方、未婚者は男性と比べて少なく、配偶者がいる人の3割弱の67万人となっているが、同じように親と同居するケースは多く、非就業者は9万人いる。

 

結婚や親との同居などは社会的価値観の変化が影響している面はあるが、“無職”である非就業者だけでなく、賃金水準が低い非正規雇用の就業者も含めたなかには、経済的な理由で結婚をあきらめざるを得ない、基本的な生活を親に頼らざるを得ないケースも少なくないとみられる。

 

親との同居で自身の生活を成り立たせてきた人が、今後親の介護に直面すると、これまでの「支えられていた」立場から一転して「支える」立場へと変わることになる。親の持つ資産が心もとなければ、自分と親の二人の生活を支えていくのは非常に困難になり、介護負担の増大とともに、親子ともども貧困に陥りかねない。

 

 

下田 裕介

株式会社日本総合研究所 調査部 主任研究員