1990年代初め、バブル経済崩壊後に訪れた「就職氷河期」。消費を抑えざるを得ない就職氷河期世代のなかには、もはや「節約」という言葉では片づけられない状況へ身を置いている人もいる。日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏がデータをもって指摘していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
40代で手取り10万円台も…「就職氷河期世代」を取り巻く厳しい現実 (※写真はイメージです/PIXTA)

「飲み会に行けない」高カロリーのパンでしのぐ40歳

例えば、職場の飲み会は一度でそれなりの出費となるため、大きな負担と感じることも少なくない。これに関して、こんなエピソードが紹介されている。

 

「契約社員の40代女性のもとへ正社員がやってきて送別会の話を聞いた際に会費を聞いたところ、まわりの契約社員は皆、手で小さく「×」のサインを出す。手取りが10万円台半ばから後半の状況で、その会費で何食食べられるかと考えてしまうとのことだ」(AERA、2018年12月3日、「6千円なんてとても払えない 非正規と正社員それぞれの『難しさ』飲みニケーションの新常識」)

 

「節約」という言葉だけでは片づけられない厳しい状況に身を置かざるを得ない人たちはさらに過酷だ。住居がなく、ネットカフェや漫画喫茶などに寝泊まりする、いわゆる「ネットカフェ難民」を経験した就職氷河期世代が、当時の自身をこう振り返っている。

 

「狭い個室でつかの間の睡眠をとる。翌朝、荷物を抱えて最寄り駅のコインロッカーを同じような境遇の人たちと奪い合い、荷物を預けて仕事へ向かう。支出を抑えるため外で夜を明かすこともあった。銭湯に通い、洗濯もまめに行い身ぎれいにする一方で、主食は食費を抑えて腹持ちがよい100円ショップの高カロリーの菓子パン。3~4ヵ月続けるうちに体調を崩してしまった」(毎日新聞、2019年8月20日朝刊、「終わらない氷河期:今を生き抜く/3 主食は100円のパン 元ネットカフェ難民の40歳」)

 

ちなみに、東京都が2016~2017年に調査をしたところ、非正規雇用のネットカフェ難民は都内で約3000人いると推計しており、年代別では就職氷河期世代が含まれる30代が38.6%と最も高い。