「忘れ去られた若者たち」とも呼ばれた就職氷河期世代。新卒時に無職、または非正規雇用となった後、現在でも新たな正規雇用や正規への雇用転換を果たせていない人が少なくない。ここでは雇用と賃金からみる就職氷河期世代の実情について、日本総合研究所・主任研究員の下田裕介氏が解説していく。 ※本記事は、書籍『就職氷河期世代の行く先』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。
老後の不安は増すばかり…「新卒から非正規のまま」氷河期世代の実態 (※写真はイメージです/PIXTA)

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就職氷河期世代「同窓会に怖くて出られない」

「貧乏くじという言葉が、私たちにはぴったり」

 

「私たちの番になったら就職難。ちょっとの差で天国と地獄」

 

「同窓会には怖くて出られない」――――

 

これらは、就職氷河期世代の実情を紹介した新聞の連載に対して同世代から寄せられた反響である。共感とともに同世代の悲痛ともいえる声が並んでおり、自分の思いと重なる就職氷河期世代も多いのではないだろうか。

 

ここでは、就職氷河期世代がこれまでに身を置いてきた厳しい環境を通じて、“いま”は果たしてどういう状況にあるのか、雇用や賃金を中心にその実像に迫る。

 

まずは、雇用面である。就職氷河期世代で新卒時に無職、または非正規雇用となった人は、その後も新規の正規雇用や、非正規から正規への雇用転換を果たすのが困難となった。

 

これは、当時、企業が正規雇用を抑えてきた一方で、低賃金の非正規雇用の活用を進めたほか、「メンバーシップ型」の雇用を中心としているゆえ、新卒時にその“レール”にうまく乗り損ねると、そこからの敗者復活が困難であったことが影響している。

 

もっとも、それもさることながら、学生時代に受けた教育内容が不十分で、社会人として必要とされる能力や意識を十分に涵養できていないため、就職先をみつけられない、また、卒業後に改めて学び直して再チャレンジする道が開かれていないことも背景に挙げられる。

 

実際に総務省「労働力調査」から、就業者のうち会社、団体などの役員を除く雇用者における非正規の職員・従業員の割合(非正規雇用比率)をみると、就業に結婚や子どもの誕生といったライフステージの変化の影響を相対的に受けにくい男性でも、就職氷河期世代はその上の世代よりも高水準で推移している([図表1])。

 

[図表1]非正規雇用比率(男性)

 

例えば、30代後半においては、非正規雇用比率が、団塊ジュニア世代は8.4%、ポスト団塊ジュニア世代(前期)が10.3%と、上の世代であるバブル世代の6.9%より、1.5〜3.4%ポイント高い。

 

同様に40代前半においても、団塊ジュニア世代やポスト団塊ジュニア世代(前期)は上の世代であるバブル世代や新人類(後期)と比べて1〜3%ポイント程度高く、団塊ジュニア世代の40代後半も、やや改善したとはいえその傾向に大きな変化はない。