信託契約は「委託者」と「受託者」の契約
前回に引き続き、信託を活用した具体的な事例を見ていきます。
【ケース3】
孫に財産を生前贈与したいのですが、大きな財産をもらうと、孫がそれを当てにしてがんばらなくなるのではと心配。
孫に贈与したいが、多額の贈与をすることが孫にとっていいことなのか迷っている、というお話をよく耳にします。このような場合にも信託を活用することができます。
贈与契約は、贈る側、もらう側双方の合意が必要な「双務契約」ですから、贈る側だけの考えでは成立しません。必ず、もらう側の同意が必要となります。
これに対し、信託契約は、あくまでも信託の委託者と受託者の契約となります。孫は、利益を得る受益者となりますが、この信託契約書に「受益者に対して受益者となったことを通知しない」と定めることが可能です。
つまり、孫に贈与したことを伝えなくても、信託契約により孫が受益者となるので、実質的には財産を贈与することができるのです。
〈ポイント〉
①信託を活用すれば、子どもに知らせずに財産を贈与することができる。
②贈与した財産の管理・運営を、贈与後も引き続き親が行える。
【図表 贈与と信託の違い】