「遺言書」は何度でも書き換えられるが…
今回は前回に引き続き、信託を活用した具体的な事例を見ていきます。
【ケース2】
相続人の合意のもと父に遺言書を書いてもらったが、後日父が一人で書き直さないか不安。
遺言書は、何度でも書き直すことができます。たとえそれが親族全員の同意のもとに作成されたものであっても、お父様の意思ひとつで書き直せるのです。それが遺言書の限界、といえるかもしれません。
そこで遺言書の代わりに「遺言代用信託」を活用すれば、この不安はなくなります。信託契約書で、「委託者である父は契約内容を変更できない」と定めておけばよいのです。ケース2のような場合は、お父様に自らを委託者兼受益者とする遺言代用信託契約を結んでもらうとよいでしょう。
その中に「契約内容を変更できない」という規定を盛り込んでもらえば、相続人となるはずの人たちは「いざ遺言書を開封してみたら、まったく思惑とは違っているのでは・・・」などという不安から解放されます。
相続発生後の面倒な手続きも不要に!?
さらに信託を利用することで財産の所有権は受託者に移転されているので(不動産であれば受託者名義に登記されています)、相続が発生した際には、受益者を変更するだけの手続きで、財産から上がる利益を相続人が受け取れるようになります。
これが遺言書による相続であれば、完了するまでには多くの手続きを踏まなければなりません。公正証書遺言以外では、裁判所の検認が必要です。手続き的にも面倒ですし、紛失や偽造、書式の不備などさまざまな問題が起きる危険性も無視できません。
一方、信託の受益者変更は、相続発生後すぐに手続きができるので、安心感があります。
〈ポイント〉
①遺言書では書き直しが何度でもできるが、遺言代用信託では、変更できないようにすることが可能。
②相続発生後の手続きがすぐにできる。