前回は、信託財産は誰のものになるのかを説明しました。今回は、信託を活用で遺産の承継順位を決めるなど、具体的な事例を見ていきます。

「遺言代用信託」は承継順位を定めた相続ができる

今回は、信託を活用した具体的な事例を見ていきます。

 

【ケース1】

息子に財産を生前贈与したいが、もし息子が嫁より先に亡くなった場合、財産が嫁に相続されてしまうのではないか心配。

 

先祖代々受け継いできた土地など、「どうしても、直系の親族に承継していってほしい」と考えている財産がある場合には、信託を利用することがとても有効です。遺言書でも対応できそうですが、1回だけしか財産の承継者を定めることができない、という難点があります。

 

ところが「遺言代用信託」を利用すれば、あらゆるケースを想定して承継順位を定めることが可能です。自分が亡くなった後の承継順位も、「AからBに、BからCに、CからDに・・・」と定めることができるのです。

 

ケース1のような状況では、贈与した財産について、息子が委託者兼受益者、親が受託者となる信託契約を結びます。財産から上がる収益は息子のものになりますが、息子が先に亡くなった場合には親が財産を管理していくことができるため、「嫁にとられてしまう」という心配はありません。同様のケースでは、贈与せずに親が委託者兼受託者となり、息子を受益者にするという方法を選んでもよいでしょう。

有効期限が定められている点に注意

さらに受益者については、息子が亡くなった場合の次の受益者を設定しておけるため、「将来的にどんな事態が起きても準備万全」という状態を信託によって作り出すことが可能です。被相続人の思いに関わる「どのように」という事項まで決めることができるのです。

 

このように資産を持つ人にとって、大変意味の大きい制度ですが、注意すべき点がひとつだけあります。承継順位などを定めた「遺言代用信託」には、30年という有効期限が定められている、ということ。信託開始から30年経過後に最初に条件(死亡等)を満たしたときが、適用の期限となります。

 

〈ポイント〉

①「遺言代用信託」は「遺言信託」とはまったく別物で、「思い」を承継できる。

②自身の死後についても承継者を決めておけるので、直系血族以外に財産が移転することを防げる。

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    本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『家族と会社を守る「不動産」「自社株」の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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