「円高」の史上最高値は「1米ドル=1円」
Q2.「円高というと、2011年10月の1米ドル=75円32銭が思い出されます。これが歴史上最高値だったのでしょうか?」
⇒A. 1米ドル=75円32銭が歴史的な円高ではありません。実は、1米ドル=1円という歴史的円高の時代があったのです。早速、米ドルと日本円との相場の歴史を紐解いてみましょう。
全体的に見ると戦前は「円安」、戦後は「円高」だが…
①明治の円誕生~第一次世界大戦
米ドルと円相場の歴史は150年に過ぎません。大局的に見れば、戦前は円安の歴史で、戦後は一転円高の歴史と言えます。円相場は、1871年に1米ドル=1円でスタートし、その後1米ドル=360円の固定相場制など、幾多の変遷を経て今日に至っています。
円は1871年に明治政府の新貨条例により、1米ドル=1円という相場で誕生しました。そして1885年、日本は紙幣を銀と兌換する銀本位制をとりますが、既に欧米では金本位制を採っていたため、銀価格が下落し、円もじり安となりました。しかし、日清戦争に勝利した日本は、清国から多額の賠償金を英ポンドで獲得し、その英ポンドを英国で金に兌換することで、日本も本格的な金本位制に移行し、1米ドル=2円とすることになったのです。
それから1917年までの20年間、為替は金本位制の下で安定的に1米ドル=2円で推移します。特に第一次世界大戦のときは、日本の物資が世界中に輸出されたため、一時1円台の円高となりました。
②関東大震災~第二次世界大戦
関東大震災によって円は急激に下落し、1924年には1米ドル=2円63銭まで円安が進みます。さらに1931年、英国が金本位制を停止したため、日本も離脱し、金への兌換を停止しました。これによって一気に物価が上昇し、大幅な米ドル高・円安となり、1932年に1米ドル=5円となったのを契機に第二次世界大戦に突入しました。
③第二次世界大戦後~現在
第二次大戦後は、急激なインフレを抑制するため、米司令部による管理相場が続きます。終戦時の1米ドル=15円から始まり、翌年には50円、1948年には270円となり、1949年に360円の固定相場制に移行します。この体制が1970年まで継続しますが、71年8月に突然ニクソン大統領が金とドルの交換を一時停止すると宣言します。こうして金という後ろ盾を失った固定相場制は事実上崩壊し、1米ドル=308円時代を経て、1973年に変動相場制へ移行したのです。
その後も、米国は財政と貿易の双子の赤字を抱え続けたため、円高は増々進行し、1995年には79円75銭をつけます。しかし、今度は日本のバブル経済が崩壊し、1998年には140円台まで値を戻しました。しかし、再び2008年に発生したリーマン・ショックによって米ドル安となり、2011年には75円32銭をつけるまで円高が進行しました。
このように乱高下を繰り返してきましたが、この数年は、100~115円のレンジで動いています。しかし、世界的な経済の低迷や米中対立、コロナ禍、中東情勢、超金融緩和政策など、様々な不安要素が顕在化しつつあるので、乱高下する可能性は否定できません。
大村 博
FXソリューションズ代表、外国為替コンサルタント
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