前回は、個人の不動産投資家にとって出口戦略はそれほど重要ではない理由を説明しました。今回は、建築時から法令が変わり、いわゆる「既存不適格」となった物件について見ていきます。

建築時には適法であった物件だが・・・

アパートに限らず、建築にはそれを規制する法令があります。建築基準法がその代表的なものです。しかし、なかにはその法規に適合していない物件もあるのが実情です。既存の法令に合致していないものですので、「既存不適格」という言い方をします。

 

では、この既存不適格の物件は買ってよいものなのでしょうか。それとも、手を出してはいけないものなのでしょうか。好立地にある物件で、既存不適格であるがために安く取得できる条件があれば、筆者は取得するのもありだと思います。既存不適格物件で多い事例は、建築時から法令が変わってしまって、建築時点では適法であったものが、不適格になってしまったようなケースです。

 

先日取引した事例では、さいたま市の非常にいい立地の物件なのですが、建築時には容積の規定がなく、建蔽の規定だけだったものが、その後容積率の規定ができたことにより既存不適格となってしまったものでした。1971年までは容積の規定はなく、その後、200%に指定されてしまったのです。

 

その他、用途地域が建築時と変更になったために容積率が変わってしまったケースや、計画道路が通ったことにより敷地の一部が削られてしまって容積率を満たさなくなってしまったケースなどが既存不適格の例として挙げられます。

立地条件が良ければ「更地での出口」は魅力的に・・・

このような既存不適格の物件に共通するのは、昔、建てられた物件であり、そのような物件は立地が良いのです。考えてみれば当たり前で、立地の良いところからアパート・マンションは建てられてきました。30年以上前にマンションが建てられた場所は、当然駅のそばといった好立地なのです。そのため、建物を解体した場合、更地での出口は魅力的です。

 

しかし、既存不適格物件に関しては問題もあります。資金調達の問題です。姉歯問題、東横インの問題等で、法令に適合していない物件への金融機関の融資が厳しくなったという事実があります。

 

実際、先ほどの事例では、地元の地方銀行が融資を行いましたが、既存不適格であることを理由に融資をしないという金融機関がありますので、資金調達では若干の苦労を伴います。なお、既存不適格と違法建築は若干意味が異なります。違法建築は建築時点ですでに法令を遵守していない物件です。これらの物件は避けるのが賢明です。

本連載は、2012年6月27日刊行の書籍『年収1000万円から始める「アパート事業」による資産形成入門 [改訂版] 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本書は情報の提供及び学習を主な目的としたものであり、著者独自の調査に基づいて執筆されています。実際の投資の成功を保証するものではなく、本書を用いた運用は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本書の内容に関して運用した結果については、著者及び幻冬舎グループはいかなる責任も負いかねます。

年収1000万円から始める  「アパート事業」による 資産形成入門

年収1000万円から始める 「アパート事業」による 資産形成入門

大谷 義武

幻冬舎メディアコンサルティング

大企業でも倒産する現在、自分の身は自分で守るべく、副収入としての投資を考える人が増えています。 そんななか、アパート事業による資産形成の火付け役となった本書が、改訂版としてパワーアップいたしました。不動産会社の…

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