※画像はイメージです/PIXTA

病院で管に繋がれる延命治療と、在宅療養。どちらが幸せかは、人それぞれ異なるもので、強要できるものではありません。ここでは、在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき院長の宮本謙一氏が、実際に診た80代男性の事例について解説していきます。

Dさんが在宅療養で「取り戻したもの」

入院中はずっと手足を拘束され、指を動かすことができないほど関節が固まっていましたが、リハビリテーションとマッサージの効果で少しずつ改善し、手を動かして顔を搔くこともできるようになりました。何より、退院直後の苦痛に満ちてこわばった表情が、日に日に穏やかな表情に変化し、時々笑顔も見られるようになっていきました。

 

食事という人間にとっての最大の楽しみ、そして自宅で過ごすという安堵感、やっと取り戻した日常生活におけるささやかな喜びが、患者さんの笑顔を取り戻したのだと思います。

 

残念ながら、Dさんは、寝たきり状態から車椅子に移れるほどには身体機能は回復せず、通常の食事が食べられるほどには嚥下機能も改善せず、最終的には重度の誤嚥性肺炎を合併し、退院後半年ほどで死に至りました。

 

半年という期間が長かったのか短かったのか、私には分かりません。しかし、Dさんにとっては確実に本当の自分を取り戻し、笑顔を取り戻し、自分らしく生きることができた有意義な半年間だったのではないかと思います。

 

そして、その半年間を支えたのは、ずっとそばで介護を続け、食事の工夫を続けた家族でした。私たちは、患者さんと家族の笑顔が見たくて、半年間、できるだけのサポートを心がけました。

 

十分なことができたかどうかは分かりませんが、笑顔の絶えない在宅療養を目指し、それを少しでも実現できたことは、在宅療養をサポートしたチームの一員として誇りに思っています。

 

 

宮本 謙一 

在宅療養支援クリニック かえでの風 たま・かわさき 院長

 

 

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    ※本連載は、宮本謙一氏の著書『在宅医療と「笑い」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    在宅医療と「笑い」

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    宮本 謙一

    幻冬舎メディアコンサルティング

    在宅医療は、通院が難しい高齢の慢性疾患の患者さんや、がんの終末期の患者さんなどが、自宅で定期的に丁寧な診察を受けられる便利な制度です。 メリットは大きいのですが、うまくいかないときもあります。 医師や看護師…

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