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シェアオフィスへの用途転向で、利益確保を狙う
待ちに待ったオリンピックも無観客開催となったことで国内宿泊需要がなくなった上、オリ・パラが終了した今、明るい材料も見当たりません。ホテル業者・民泊事業者は今後どのような活路を見出せば良いのでしょうか?
まずは近年増えているホテルの経営スタイルをシミュレーションしてみましょう。不動産投資法人が投資用1棟ビルを取得し、投資家を募ってREIT方式で賃貸運用を始めます。フロア毎に区分してオフィス賃貸することもできますが、東京オリンピック招致決定直後に取得した物件であれば、複数のオフィス賃貸よりホテル業者への1棟貸しの方が有望と考えるのが妥当です。
しかしその読みは外れ、コロナ禍の影響でホテルへの客足が途絶え、業績赤字がかさんでいきます。テナントであるホテル業者は民事再生法の適用を申請したものの事業再建の見込みもなく、やがて家賃の滞納が慢性化します。
例えばこの1棟ビルの取得費用が20億円で投資利回りが5%なら、大家は毎月800万円超、年間1億円の年収を失うことになります。大家である不動産投資法人ばかりでなく、顧客であるREIT投資家にとっても大きな損害になりますから、早急に新たな一手を打たなければなりません。
不動産投資法人はホテル業者との話し合いで賃貸借契約を解約し、その後3億円の費用をかけてリフォームを実施。ホテルからシェアオフィスへと用途変更を行いました。初期の取得費用と併せた不動産評価額は23億円になるので、今後この物件は年収1億円超(23億円×利回り5%=1.15億円)の利益を生む使命を担うことになります。
水面下で「民泊」が増加し続けているワケ
青息吐息の民泊事業者に対しては、「インバウンド需要が回復するまでの間、海外からの邦人帰国者やコロナ軽症患者の自主隔離施設として提供しませんか?」といったセールスがひっきりなしに入っていることと思います。
本来ならば、いまごろは自らの語学力を駆使して世界各国から訪れる旅行者を存分にもてなしていたはずなのに、一時退避所的な利用価値しか見出せなくなってしまっています。
しかし一方で、水面下では民泊の開業件数が増え続けているという事実もあります。500件の廃止件数と比較すると半分以下の200件前後と微増ではあるものの、この状況下にあっても民泊にポテンシャルを感じている事業者がいることは喜ばしいことです。
実は、民泊廃業に伴いローン破綻した所有者が相場より安価で物件を手放すケースが増えており、それらを購入した投資家が、今後再起するであろうインバウンド需要を見込んで民泊経営の助走を始めているようなのです。
若い外国人旅行者はラグジュアリーホテルよりむしろ安価で庶民的な民泊を好む傾向にあります。民泊は生活感溢れる住宅街に立地していることが多いため、飾り気のない、ありのままの日本文化に浸ることもできます。
将来的にはホテルより民泊の方に人気が集中し、ホテル以上の収益を上げる事業に成長する可能性もあります。とはいえ、いまの業績低迷を打破するためには何かしらの施策が必要な状況は変わりません。前述の不動産投資法人のようにシェアオフィスへと転身する民泊あり、月額定額料金のサブスク賃貸運営に積極的な民泊ありとさまざまです。
外国人観光客が戻ってくるまでの間は、それぞれの工夫でこの苦境を乗り越えていくしかありません。
姿を変えつつ、社会が望む形態で存続を
東京オリンピック招致決定当時、ワンルームマンションとして建築確認を受けていた新築物件は軒並み、インバウンド需要を見込んだ観光者向けホテルへと計画変更されており、周辺の不動産業者は「こんなにホテルが増えたら地域の人口バランスはどうなるの?」と憂慮していました。
ところがいまでは、ホテルをワンルームマンションやシェアオフィスへと計画変更する逆転現象が起こっています。
ただ、民泊施設についてはホテルほど極端な変化はなく、開業件数もじわじわとした増加傾向を保っています。民泊はインバウンドとはまったく別分野の課題である「空き家」問題の解消策としても評価されている背景があり、宿泊客が少ない時期は、高齢化が進む地域のコミュニティ(シルバーカフェ)や、子どもたちの居場所(子ども食堂)としての役割を担いながら営業するという手段もあります。
そういった社会貢献度の高さが開業件数増に反映されているのかもしれません。社会から求められるビジネスは存続し、そうでないものは淘汰される運命にあるのです。
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