(※写真はイメージです/PIXTA)

受診控えによって患者数が減少している今、従来どおりの経営戦略では、医療機関が経営状況を回復させることは難しいでしょう。この窮地に対し、開業医である筆者は、「オンライン診療」への進出が打開策になると語ります。とはいえ、始めるには様々な準備が必要です。たとえば、オンライン診療を行うための「システム」はどのように選べばよいのでしょうか。実際に導入した医師が解説します。

オンライン診療のツールは「専用システム」がオススメ

クリニックがオンライン診療を始めるためには、自院があるエリアの地方厚生局に届け出を出す必要があります(保険診療を行わない場合、届け出は不要)。

 

また、オンライン診療に使うツールも用意しなければなりません。厚生労働省の「『オンライン診療の適切な実施に関する指針』に関するQ&A」では「対面診療の代替として認められているオンライン診療は、『リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段』を採用することにより、対面診療に代替し得る程度のものである必要があるため、チャットなどのみによる診療は認められません」とされていますから、テレビ電話のような映像コミュニケーションツールを使う必要があります。

 

ところで、オンライン診療にZoomやSkypeなどを使うことは、2021年現在で不可能ではありません。

 

ただし、こうした汎用ツールはセキュリティーの面で懸念材料が多く、厚生労働省から使用はできるだけ控えるよう通達が出ていますから、いずれは使えなくなる時期が来ます。

 

また、汎用ツールには予約システムや支払いシステムなどが含まれていないため、使い勝手が悪いものです。

 

そのため、オンライン診療に乗りだすのであれば、最初から専用のシステムを利用するべきです。

メジャーなシステムは2つ…実際に使ってみた感想は?

現在、メジャーなオンライン診療システムは2つあります。それぞれの料金について簡単にまとめておきましょう(金額はすべて税込み。情報は2021年5月現在のもの。詳細については各自確認を)。

 

(1)CLINICS(メドレー)

…初期費用33万円、月額利用料1万1000円(200床以上の病院は別途問い合わせ)、決済額の3.45%にあたるサービス利用料が必要。

 

(2)Curon(MICIN)

…初期費用、月額利用料ともになし、決済額の4%にあたる事務手数料が必要。また、患者側は1回の診療ごとに330円を支払う。

 

ほかにも「YaDoc」(インテグリティ・ヘルスケア)、「オンライン診療ポケットドクター」(MRT)、「CARADAオンライン診療」(カラダメディカ)などのオンライン診療ツールが知られています。また2020年12月には、新システム「LINEドクター」(LINEヘルスケア)の提供も始まりました。

 

各システムの正確なシェアは明かされていませんが、私の知る限りで最も利用されているのはCuron、僅差で続いているのがCLINICSではないかと思います。

 

私は当初、Curonを使っていましたが、途中からCLINICSに切り替えました。理由はCuronでは回線を「保留」にすることができなかったからです。

 

私が経営している「すずきこどもクリニック」では、看護師が電話で予約を入れた患者に対して綿密な問診を行い、その後、私が治療を行うという流れで診療を行っています。

 

そのためオンライン診療の場合、オンライン診療システムを使って看護師が問診を行ったのち、いったんオンライン通話を中断するオペレーションにしたかったのですが、このときCuronでは会計処理画面に進んでしまい、診察再開ができなかったのです。これでは、こちらが0円で会計処理しても、患者は330円のサービス利用料を支払わなければならず、私の院の流れにはあっていませんでした。

 

一方、CLINICSでは決済ボタンを押さない限り、何度でも診察画面に戻ることができます。

 

そこで私の院の場合は、CLINICSのほうが使い勝手が良かったのです。

 

また、Curonは患者が1回の診療ごとに330円支払わなければならない点も難点でした。ほかの診療科であれば、330円程度の負担はさほど大きな問題にはなりません。

 

しかし小児科では各地方自治体が設けている「子ども医療費助成制度」により、中学生までの子どもは医療費が無料(一部自治体では18歳年度末まで)、もしくは、1回の診療ごとに数百円程度しかかからない仕組みになっています。

 

そうしたなかで330円を支払うのは患者にかなりの負担感を与えるため、CLINICSのほうがベターだったのです。

「患者が使い慣れている」診療システムがベター

ただし、CLINICSがすべてのクリニックにふさわしいというわけではありません。選ぶべきシステムは、クリニックの運営方針やオンライン診療の件数、やり方によって大きく左右されます。

 

例えば、ひとまずオンライン診療を試してみたい、あるいは、1日あたりのオンライン診療件数が少ないクリニックは、Curonのように初期費用・月額費用が無料で済むシステムのほうが向いています。

 

私は多くの患者をオンライン診療する「ヘビーユーザー」だったのでCLINICSに切り替えましたが、自院の状況に合わせてシステムを選ぶべきです。無料試用期間を用意しているシステムもありますから、実際に使って比較してもいいでしょう。

 

とはいっても、シェアの大きさは、オンライン診療システムを選ぶうえで重要な要素です。

 

患者がオンライン診療システムを使う場合、スマートフォンやタブレット端末にアプリをダウンロードする必要があります。シェアの大きなオンライン診療システムなら、患者がすでにダウンロードし、存分に使いこなしている可能性は十分にあります。一方、マイナーなシステムの場合は、患者にアプリをダウンロードさせ、新たに操作方法を覚えてもらわなくてはなりません。

 

普段はWindowsを使っている人がMacで作業すると、操作体系の違いにストレスを感じてしまうものです。

 

同様に、使い慣れていないオンライン診療システムを使うことは、患者にとってストレスです。そのため、多くの人がすでに使っているメジャーなシステムを使うほうが有利だといえます。

 

また、LINEドクターは新サービスですが、多くの人が使い慣れているLINEアプリをそのまま使える点が長所で、条件次第では十分検討の余地があります。

 

なお、これらのオンライン診療システムはどれも、提供から間もないものばかりです。そのため、機能や使い勝手については日々改善されていきます。また、利用料金についても変更される可能性が十分にあります。

 

そのため、「m3.com」、「Med Peer」、「CareNet.com」、「Medical Tribuneウェブ」といった医療従事者向けポータルサイト・ニュースサイトに定期的にアクセスし、最新の情報を得るようにしましょう。

 

 

鈴木 幹啓

すずきこどもクリニック院長

 

※本記事は書籍『開業医を救うオンライン診療』より一部を抜粋したものであり、掲載されている情報は出版時点(2021年7月)のデータに基づいています。

 

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※本連載は、鈴木幹啓氏の著書『開業医を救うオンライン診療』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

開業医を救うオンライン診療

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鈴木 幹啓

幻冬舎メディアコンサルティング

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