老後の資産作りを後押しする制度として始まった個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」。節税メリットに注目が集まりがちですが、デメリットはあるのでしょうか? 証券会社出身のSGO編集者が、解決策と一緒に初心者にもわかりやすく説明します。
iDeCo(イデコ)のデメリット5つと解決策…メリットと合わせて解説

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iDeCoを始めようと色々調べてみると、「節税メリットがあるから早いうちからやったほうがいい」や「デメリットしかないからやらないほうがいい」など様々な意見があり、本当のところはどうなの? と思う方も多いでしょう。

 

そこでこの記事では、始める前に知っておきたいiDeCoのメリットとデメリット(注意点)を5つずつ整理してお伝えします。特にデメリットに関しては、初心者が最初につまづきやすいポイントを解決策と一緒に説明するので、参考にしてください。

 

1. iDeCoのメリット5つ

iDeCoのデメリットの前に、メリットについて見ていきましょう。iDeCoの最大のメリットは節税効果にあり、①拠出時、②運用中、③受給時の3つの場面で税金が優遇されます。

 

iDeCoのメリット①:掛金が全額所得控除になる

掛金が全額所得控除になる
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

iDeCoは、毎月の掛金(積み立てる金額)を全額所得控除にすることができます。所得税や住民税の「課税所得」からiDeCoの掛金を差し引くことができるので、その年の所得税と、翌年の住民税が軽減されます。

 

言葉だけではどれくらいの節税効果があるのかイメージできないので、1年間の節税額を職業別と年収別でシミュレーションしてみましょう(子どもは0人と想定)。なお、計算には、ろうきんの『イデコの節税シミュレーター』(無料)を使いました。扶養配偶者の「あり・なし」が選べる数少ないツールなので、おすすめです。

 

結論から言うと、iDeCoは拠出した金額に対して、15~33%の金額を節税できます(表のカッコ内の数字)。そして、年収が高くなるほど節税効果が高くなります。

 

■自営業・フリーランスの場合

自営業とフリーランスの毎月の掛金の上限額は、月68,000円です。自営業やフリーランスの方は厚生年金がないので、その分、自分で老後資金を作れるように、毎月拠出できる金額は他の職業よりも多くなっています。

 

自営業・フリーランスのiDeCo節税シミュレーション
自営業・フリーランスのiDeCo節税シミュレーション (SGO編集部作成)

 

■会社員の場合

会社員の毎月の掛金の上限額は、企業年金がない場合で月23,000円です。

 

会社員のiDeCo節税シミュレーション
会社員のiDeCo節税シミュレーション (SGO編集部作成)

 

■公務員の場合

公務員の毎月の掛金の上限額は、月12,000円です。余談ですが、公務員の共済年金は官民格差の解消のために2015年に厚生年金に統一されました。その結果、2017年から公務員もiDeCoに加入できるようになりました。

 

公務員のiDeCo節税シミュレーション
公務員のiDeCo節税シミュレーション (SGO編集部作成)

 

■専業主婦(専業主夫)の場合

専業主婦(専業主夫)も2017年からiDeCoに加入できるようになりました。

 

毎月の掛金の上限額は月23,000円です。しかし、無収入の場合や、税金の支払いが発生しないように年収103万円を超えないように働いているパートの方は、そもそも所得税や住民税を払っていないので、「全額所得控除」のメリットはありません。節税効果が得られるのは、次の②と③で紹介するメリットになります。

 

iDeCoのメリット②:運用益が非課税になる

運用益が非課税になる
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

一般的に、株式や投資信託などの金融商品を買って利益が出ると、売却するときに利益に対して20.315%が課税されます。たとえば、10万円の利益が出たら、約2万円が税金で引かれて、手元には大体8万円が残ります。しかし、iDeCoで運用して出た利益には課税されず、売却すると10万円がそのまま利益として残ります。

 

そのため、先ほどの「iDeCoのメリット①:掛金が全額所得控除になる」の15~33%の節税メリットに加えて売却益も非課税になると、掛金に対してかなりの節税効果が得られることがわかります。

 

iDeCoのメリット③:受取時にも税制優遇が受けられる

受取時にも税制優遇が受けられる
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

iDeCoで積み立てた資産は60歳~70歳(2022年4月からは75歳まで)の間に、一時金(まとめて一度で受け取る形式)」もしくは「年金(分割で毎月定期的に受け取る形式)」として受け取りができます(併用可)。

 

その際、一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、税負担が軽減されます。なお、どちらの形式で受け取るべきかは今後のライフプランによって異なります。

 

iDeCoの3つの節税メリットについてお伝えしましたが、今度は節税以外のメリットを2つ見ていきましょう。

 

iDeCoのメリット④:転職しても運用資産を持ち運べる

転職しても運用資産を持ち運べる
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

確定拠出年金には「個人型(iDeCo)」と「企業型(企業型DC)」の2種類あり、後者の「企業型確定拠出年金」は、企業が掛金を拠出して従業員の資産形成を後押しする制度です。

 

同じ「確定拠出年金」という制度なので、もしiDeCoに加入していたフリーランスの方が企業型DCがある会社に入社した場合、これまでiDeCoで運用していた資産を企業型DCに移すことができます(=移管)。そして、その会社を退社し、今度も企業型DCがある会社に転職すれば、転職先の企業型DCにまた移せます。

 

厳密には、拠出できる掛金が増減したり、iDeCoと企業型DCを併用できたりしますが、ここでは、iDeCoには転職しても運用資産を持ち運べるポータビリティ制度があることを覚えておきましょう。このメリットのお陰で、自分でiDeCoへの拠出を止めない限り、長期にわたって継続的に老後資産を積み立てることができます。

 

iDeCoのメリット⑤:一度設定すれば、基本的にほったらかしでOK

一度設定すれば、基本的にほったらかしでOK
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

iDeCoは初回の手続きが多少面倒に感じるかもしれませんが、一度設定してしまえば、毎月一定の金額を自動で引き落として積み立てができます。

 

その上、長期投資を実践する上で基本とされている「長期・積立・分散」を、ドルコスト平均法の仕組みを利用して投資してくれるので、iDeCo口座の残高を年に数回チェックする以外は、基本的にはほったらかしで大丈夫です。

 

つまり、会社四季報で企業分析をしたり、株価チャートを分析して売買タイミングを図る必要がないので、その分の時間を大切な家族と過ごしたり、自分の趣味の時間に充てたりすることができます。

 

2. iDeCoのデメリット(注意点)5つ

節税効果が高いiDeCoですが、デメリット(注意点)についても把握しておきましょう。解決策と合わせてお伝えします。

 

iDeCoのデメリット①:死亡したとき以外は60歳まで引き出せない

死亡したとき以外は60歳まで引き出せない
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

iDeCoは「個人型確定拠出年金」と言われるようにあくまでも「年金」なので、原則60歳まで引き出せません。ただし、引き出せると思うと使ってしまうこともあるので、このデメリットはお金が貯まる「強制力」として働き、逆にメリットにもなりえます。

 

そのため、節税効果を高めるために、無理して掛金を上限に設定することはおすすめしません。ちなみに、掛金額は1年に1回まで変更できるので、年収がダウンした場合などは、掛金額を引き下げるなどして柔軟に対応しましょう。なお、つみたてNISAならいつでも売却可能なので、併用して老後資金を作ることも選択肢の1つです。

 

それでは、どのような場合なら60歳にならなくても引き出せるのかというと、死亡したときに限られます。具体的には、iDeCo加入者が60歳になる前に死亡した場合、遺族に死亡一時金(iDeCoで積み立てた資産を売却して現金化した額)が支払われます。

 

ただし、加入者の死亡後5年以内に遺族が給付の申請を行う必要があるので、万が一に備えて、どこの証券会社でiDeCoに加入してるかやログイン情報などを家族に伝えておくことをおすすめします。

 

iDeCoのデメリット②:元本割れのリスクがある

元本割れのリスクがある
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

iDeCoは「年金」とはいえ、運用する商品は価格が変動する投資信託が中心になります。そのため、将来もらえる公的年金に上乗せしようとiDeCoを始めたにもかかわらず元本割れをしてしまい、せっかく貯めた積立資産が減ってしまう可能性もあります(公的年金には影響なし)。

 

ただし、iDeCoは最初の商品選びを間違えなければ、「長期・積立・分散」で着実に老後資産を積み上げられる確率が高い制度です。そのため、元本割れリスクが怖いという理由だけでiDeCoを使わないのはもったいないです。

 

そもそも、「iDeCoのメリット①:掛金が全額所得控除になる」の職業別による節税シミュレーションで見たように、iDeCoは拠出した金額に対して15~33%の金額を節税できる制度です。そのため、元本割れをしたとしても、節税分も含めて考えると、お金を減らすリスクは少ないと考えていいでしょう。

 

iDeCoのデメリット③:所得税や住民税の納付がゼロだと、全額所得控除のメリットが受けられない

所得税や住民税の納付がゼロだと、全額所得控除のメリットが受けられない
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「iDeCoのメリット①:掛金が全額所得控除になる」の箇所でもお伝えしましたが、無収入の専業主婦など、そもそも所得税や住民税を払う必要がない人には、iDeCoの全額所得控除のメリットはありません。これは、住宅ローン控除を使っていて所得税や住民税がゼロの人も同じです。

 

少しでも所得税や住民税を払っていればiDeCoの所得控除は使えないことはないのですが、控除できる額は少なくなります。そのため、特に住宅ローン控除がある人は、iDeCoを始める前によく考えてから始めることをおすすめします。

 

ただしこの場合でも、iDeCoの運用益が非課税になるメリットと、受取時に税制優遇が受けられる節税メリットは享受できます。

 

iDeCoのデメリット④:ふるさと納税で寄付できる金額が少なくなる

ふるさと納税で寄付できる金額が少なくなる
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

これはあまり知られていないiDeCoのデメリットなのですが、iDeCoに加入していると課税所得が下がるため、ふるさと納税の税控除額が少なくなります。

 

厳密に言うと、年収に応じた控除額の上限まで寄付でき、返礼品も送られてきます。しかし、本来は実質2,000円の負担で済むところを、それ以上の金額を負担することになり、「本当の寄付」になります(私も一度経験しました)。

 

そのため、すでにiDeCoをしていて、12月などに駆け込みでふるさと納税をして節税する場合は、『auのiDeCoのふるさと納税シミュレーション』などのツール(無料)を使って毎月のiDeCoの掛金を入力し、いくらまでの寄付なら控除額の上限に収まるかを調べることをおすすめします。

 

iDeCoのデメリット⑤:手数料や口座管理費用が意外とかかる

手数料や口座管理費用が意外とかかる
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

では、元本割れを避けるために定期預金などの「元本確保型」の商品を選べば安心だと考える人もいるかもしれません。しかし、iDeCoには次の表に書いたような手数料がかかります。

 

iDeCoにかかる手数料
iDeCoにかかる手数料

 

どの金融機関を選んでも毎月171円(=収納手数料105円+事務手数料66円)の手数料が必ずかかり、年間にすると2,052円(=171円×12ヵ月)になります。

 

SBI証券のiDeCoセレクトプランで取り扱っている「あおぞらDC定期(1年)」の金利が0.01%なので、会社員で毎月23,000円、年間276,000円を定期預金で積み立てても、1年で27.6円(=276,000円×0.01%)の利息しかつかないので、これでは完全に手数料負けしてしまいます。

 

そのため、iDeCoでは信託報酬(投資信託の運用手数料)が安いインデックス投信などのリスク商品のなかから選ぶことをおすすめします(参照:『なぜiDeCoで「元本確保型」を選ぶと「元本割れ」するのか?)。

 

3. 人気の投資信託を扱っているiDeCoでおすすめの証券会社

人気の投資信託を扱っているiDeCoでおすすめの証券会社
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

投資信託の信託報酬は安いほうがいいと言っても、種類が多くてどの商品を選べばよいか悩む人は多いでしょう。

 

そこでおすすめなのが、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)」シリーズです。この投資信託は、コンセプトに「他社が同じテーマ(内容)の投資信託の信託報酬を引き下げたら、ウチも同水準を目指して引き下げます」と打ち出しており、常に最低水準のコストで運用できるメリットで個人投資家の人気を集めています。

 

そのため、「eMAXIS Slim」シリーズを選んでおけば、常に最低水準の信託報酬で運用できることになります。ここでは、主要なネット証券のなかから、この「eMAXIS Slim」シリーズを取り扱っている証券会社を3社紹介します。

 

3.1. SBI証券(セレクトプラン)

■SBI証券のおすすめポイント

・「eMAXIS Slim」シリーズの取り扱いが8種類
・口座数1位の抜群の信頼力
・Tポイントが貯まる!
・三井住友ナンバーレスカードで積立をすると、Vポイントが最大3%貯まる

 

SBI証券のiDeCoセレクトプランでは、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」「eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)」「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」など8種類の「eMAXIS Slim」がラインナップされています。

 

※SBI証券のiDeCoにはもう1つ「オリジナルプラン」がありましたが、2021年1月で新規の受付を停止しています。

 

また、口座数が1位で多くの個人投資家に支持されており、Tポイントが貯めるサービスもあります。

 

さらに、クレジットカードに番号が書いていない「安心安全のカード」として発行数を伸ばしている三井住友ナンバーレスカードを使ってSBI証券でつみたてNISAの掛金を引き落とすと、SMBCグループの「Vポイント」が最大3%貯まる「クレカ積立」サービスを実施中です(2021年12月10日までに積立設定をする必要あり)。

 

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3.2. 松井証券

■松井証券のおすすめポイント

・「eMAXIS Slim」シリーズの取り扱いが13種類
・1日50万円までの現物取引、信用取引の手数料が無料
・創業100年の信頼と実績

 

松井証券のiDeCoでは、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」「eMAXIS Slim全世界株式(3地域均等型)」「eMAXIS Slim国内リートインデックス」など、SBI証券を上回る13種類の「eMAXIS Slim」がラインナップされています。

 

また、1日50万円までなら手数料0円で現物取引と信用取引ができ、個人投資家の人気を集まています。

 

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3.3. マネックス証券

■マネックス証券のおすすめポイント

・「eMAXIS Slim」シリーズの取り扱いが6種類
・新規公開株(IPO株)の抽選が完全平等抽選
・米国株の取扱数が国内最多の約4,000銘柄

 

マネックス証券のiDeCoでは、「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」など6種類の「eMAXIS Slim」がラインナップされています。

 

また、マネックス証券は、新規公開株(IPO株)を獲得できるチャンスが完全平等抽選である点も見逃せません。

 

新規公開株は公募価格より初値が高くなる確率が高いことで個人投資家に人気で、株式公開前に証券会社に公募価格で購入する申し込みをしても、落選するケースがほとんどです。どの顧客にIPO株を配分するかは各証券会社で基準が異なりますが、口座残高や過去の取引履歴を重視している証券会社が多いようです。

 

しかし、マネックス証券の場合は100%平等抽選を謳っており、公募獲得のチャンスが誰にでもあります。

 

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(番外編) 楽天証券

■楽天証券のおすすめポイント

・世界有数の運用会社バンガード社の「楽天・バンガード・ファンド」シリーズをiDeCoで取り扱っている
・楽天カードでつみたてNISAの掛金を積み立てると、楽天ポイントが1%貯まる

 

最後に番外編として、「eMAXIS Slim」シリーズを扱っていませんが、世界有数の運用会社バンガード社の「楽天・バンガード・ファンド」シリーズをiDeCoで取り扱っている楽天証券を紹介します。

 

この「楽天・バンガード・ファンド」シリーズは、日本の投資家の資産形成を支援する高度な投資信託を作りたいという楽天側とバンガード・グループの思いを形にした商品であり、バンガードの創業者であるジョン・ボーグル氏が提唱した「長期分散投資」を実現した投資信託です。「楽天・全米株式インデックス・ファンド」と「楽天・全世界株式インデックス・ファンド」の2種類があり、2017年9月の運用開始以来、純資産総額を伸ばしています。

 

ちなみに、つみたてNISAの掛金を楽天カードで引き落とすと楽天ポイントが1%貯まりますが、iDeCoはそもそも口座振替が基本なので、楽天証券でiDeCoを始めても楽天ポイントは貯まりません。注意しましょう。

 

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まとめ

最後に、iDeCoのメリットとデメリット(注意点)を整理しておきます。

 

【iDeCoのメリット5つ】

①掛金が全額所得控除になる
②運用益が非課税になる
③受取時にも税制優遇が受けられる
④転職しても運用資産を持ち運べる
⑤一度設定すれば、基本的にほったらかしでOK

 

【iDeCoのデメリット5つ】

①死亡したとき以外は60歳まで引き出せない
②元本割れのリスクがある
③所得税や住民税の納付がゼロだと、全額所得控除のメリットがない
④ふるさと納税で寄付できる金額が少なくなる
⑤手数料や口座管理費用が意外とかかる

 

この記事でiDeCoのメリットとデメリットをよく把握して、判断にご活用ください。

 

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