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医療法人のM&Aでは、どのような手法が用いられるのでしょうか? 法人の種類によって異なるスキームについて見ていきましょう。

医療法人のM&A…「手続き」はどうなる?

実際に医療法人がM&Aを実施する際には、どのような手続が必要なのでしょうか? 出資持分譲渡のケースと、法人の種類ごとの違いについて解説します。

 

■出資持分譲渡の例

出資持分譲渡によるM&Aを実施するには「出資持分譲渡契約書」を作成し締結しなければいけません。実際の譲渡価格を決める際は、締結前にはあらかじめ社員総会において議決を取る必要もあります。

 

このとき社員の持つ議決権は1人1票である点に注意しましょう。出資持分が過半数だからといって有利に進められるわけではないため、ケースによってはM&Aの初期段階でつまずく可能性もあります。

 

社員総会を経て契約書を締結すると、再び社員総会を開催し、スタッフの入退職についての承認・新理事や新監事の選任などを行います。理事が決定したら理事会を開催し、出資持分の譲渡です。

 

前任の理事長が退職すれば、出資持分の譲渡によるM&Aの一連の手続が完了します。

 

■医療法人の種類によって行政手続は異なる

医療法人がM&Aを実施する際には、監督省庁の許認可を得なければいけません。たとえば下記に挙げる許認可が代表的です。

 

都道府県:定款変更や役員変更

保健所:開設届

厚生局:保険診療を行うための開設届、施設基準の届出

支払い基金:診療報酬の振込み先

法務局:法人名称や理事長・所在地の変更等についての登記

 

またこれらの手続は、医療法人の種類によって実施しなければいけないものが異なります。正しく実行するためには専門的な知識が必要なため、医療法人のM&Aに熟練した仲介会社やアドバイザリーへ依頼するとよいでしょう。

医療法人M&A…「取引相手」はどうなる?

株式会社のM&Aであれば、さまざまな取引相手がいます。一方、医療法人のM&Aでは、株式会社ほどの自由度の高さはありません。取引相手が限定される点について知っておきましょう。

 

■基本的に買い手は医療法人

医療法人のM&Aで買い手になるのは、基本的に「医療法人」です。これまで売り手が提供してきた医療を引き継げる法人でなければいけません。加えて買収できるだけの資本力も必要です。

 

条件を満たす医療法人はそれほど多くないでしょう。資本力があれば、出資持分の買い取りは可能です。しかし出資持分を持ち社員になれるのは個人と決まっており、豊富な資金があっても株式会社は買い手になれません。

 

また理事長は基本的に医師か歯科医師と決まっています。都道府県知事の認可を受けることで医師以外が理事長に就くこともできますが、個別の相談が必要です。

 

■異業種間も可能だが非営利性の確保が必須

M&Aの買い手になれるのは医療法人に限定されます。加えて持分あり医療法人と取引している株式会社などの営利法人は、この医療法人の社員にはなれず、社員総会での議決権も持てません。

 

ただし非営利性が確保されていれば、異業種の法人が医療法人へ出資することや、持分の買い取りをすることは可能です。この仕組みを利用して一般企業が医療法人を引き継いだのが、セコムと倉本記念病院のケースです。

 

経営危機に陥っていた倉本記念病院は、セコムに買収されました。そして非営利性を保つために、セコムが買収した土地と建物を病院へ貸し付ける形での出資を行い、経営にも参画したのです。

 

一般企業がスピーディーに病院経営へ参画できる方法といえます。

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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