楽譜を読むことは難しいという思い込み
楽器を演奏するには、楽譜が読めないといけません。しかし、やり慣れていない人にとっては、線の上をおたまじゃくしが泳いでいるように見えるだけでしょう。楽譜を読めるようになるためには、さまざまなルールを覚えなければならないのです。この時点で、すでに嫌気がしてくる方もいるでしょう。そこで知っていただきたいのは、音楽は言語である、ということです。人は国が違えば、話したり書いたりする言葉が違います。音楽もこれと同じで、楽譜に書いて表している、ということなのです。この楽譜を通じて、言語が違う人とも音楽の世界では、コミュニケーションがとれるわけです。そういう意味でいえば、日本人が英語を覚えることと似ているかもしれません。
ただ、経験者のなかには「楽譜が読めなくても演奏はできる」と言う人もいることは事実。誰もが知っているようなミュージシャンのなかにも、実は楽譜が読めないという人がいるくらいです。そういう人たちというのは、コード進行を使っていたり、耳で曲を覚えたりしているようですが、逆にそのほうが難しいかもしれません。たとえばピアニストに楽譜が読めるように学んだことを後悔している人がいるかといえば、皆無といっても過言ではないでしょう。
何事を始めるにも努力は必要になりますが、それでも楽譜を読むこと自体は、意味不明なおたまじゃくしの運動会ではなく、語学のようなものであると思えば、そのハードルはおのずと下がってくるのです。基本を学ぶことで、簡単な曲であればすぐに読めるようになりますし、それを読んで演奏できるようになります。楽譜のルールを学ぶことはまた、複雑な曲でも理解できるようになることにも繋がります。
年齢を理由に躊躇するのはもったいない
近年、医学的にも脳の活性化や認知症予防につながると認められはじめた楽器演奏ですが、いったいどのような効果があるのでしょうか?
オーケストラの演奏を例にすると、奏者の前には譜面台があって曲が進むとそれぞれがページをめくっています。しかし、彼らの視線は指揮者に向けられています。これは、彼らがその曲を暗譜しているからです。この暗譜という行為は、記憶力を刺激し、脳の活性化につながるといわれています。また、ピアノにしても管楽器にしても、奏者は指を使って楽器を操作します。楽譜を理解して指先を動かすことは、脳をフル回転させることになります。これも脳にとっては、いいトレーニングとなります。
管楽器では腹式呼吸が基本となりますが、これもまた脳の活性化につながるといわれている呼吸法です。それだけでなく腹式呼吸には、ストレスに対する効果もあります。脳から分泌される神経物質に、セロトニンがあります。このセロトニンには、メンタル面を安定させ平常心を保てるように整える効果があります。幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンですが、頭の回転や決断力を高めるなど、脳の活性化にもひと役買っているのです。
このように、衰えを感じてきても、楽器演奏をすることで脳は活性化されます。純粋に音楽を楽しめるだけでなく、脳を元気にする効果がある楽器演奏は、年齢を理由に躊躇するのはもったいないですね。まずは身近な楽器から試してみることは、若返りの秘訣になるのかもしれません。