外科医の父は「完璧な終活」をしたが…ダメ弟の失踪で長男困窮 (※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の申告・納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。 期限までに相続税の申告・納付ができないと、延滞税が課せられたり、税金の軽減制度が利用できなかったりといったデメリットがあります。

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父の終活は「完璧」のはずだったが…

吉村さんの父Aは外科医でした。妻とは20年前に離婚し、以来、自宅兼診療所にずっと独りで暮らしていました。仕事以外にこれと言った趣味もなく、真面目に働いてきたAさん。それは突然のことでした。Aさんが80歳になったある日、西日暮里にあった診療所を畳み、鎌倉に家を買って暮らし始めたのです。そして彼は天気の良い日の早朝は海岸を散歩し、日中は、家の中で、大好きな本を読みふけっていました。

 

吉村さんもまた、Aさんと同居するために住まいを鎌倉に移し、数年をその家で過ごしました。そのあとAさんは介護が必要となったため、老人福祉施設に入所。今年に入って静かに息を引きとりました。

 

当初、Aさんがなぜ鎌倉に引っ越したのか、その理由が吉村さんには分かりませんでした。ふと思い出したのは、吉村さんが小さい頃の家族旅行。そのときよく連れていってもらったのが由比ガ浜や白浜でした。「Aは海が好きだったのかもしれない」と吉村さんは、Aが亡くなった今になって思うようになったのです。ただ、Aさんの思いは、どうやら他にもあったようです。

 

Aさんはとても几帳面な人だったそうです。鎌倉に住まいを買う時も、相続税のことまで考慮していました。たとえば「小規模宅地等の特例」が適用になる要件を満たすような平米数の家を建て、Aさんの自宅に吉村さんを呼び寄せています。このとき、住民票も移動させていたのがポイントです。

 

また鎌倉は近年土地の資産価値が上がっていて、評価額も上昇傾向です。「小規模宅地等の特例」を適用させれば、評価額から80%減額したものが相続税の対象になります。高騰することを見越した判断にしても、吉村さんを同居者としたこと、そして大好きな海辺で生涯を終えられたことにしても、Aさんの「終活」は完璧だったと思います。

弟失踪で、相続手続きが進まない…ついに弁護士に相談

しかし、Aさんが亡くなったあとの相続の手続きの際は、円滑に事は進みませんでした。吉村さんには弟Bさんがいました。過去形なのは、5年前に失踪してしまい、現在はBさんがどこにいるか分からないからです。

 

相続手続きをするには、Bさんの同意が必要。相続税の申告・納付の期限は、相続の開始があったことを知った日から10カ月以内に行わなくてはならず、タイムリミットはあと2カ月しかありません。手続きはストップしたままとなり、吉村さんにはBさんを探す手がかりがまったくなく困っていました。私たちも困ってしまい、弁護士の方に相談をしたところ、「不在者財産管理人」という立場の人を選定することをお勧めされました。

 

「不在者財産管理人」とは、いなくなった人の「代理人」です。ただし法的には、数日前には連絡がついていたのに、いざ相続が始まると全く連絡が取れなくなった程度だと「不在者」として認められません。依頼するためには行方不明からある程度の期間が経っていることが要件となります。

 

「不在者財産管理人」を選出するときに、よく比較される制度に「失踪宣告」という制度があります。どちらも滞っている相続手続きを進めるときに有効な手法ですが、「不在者管理人」と異なり「失踪宣告」がなされると、その人は法的に「死亡したもの」と解釈されることになります。

 

2つの制度は安易に選べるのではなく、要件が細かに決まっています。「失踪宣告」がなされる場合の要件のひとつには、その人の生存が確認された最後の時点から7年以上経っていることがあげられ、その上、手続きに長い時間を要します。また「失踪宣告」は、手続きが終わるまでに1年~1年半程度かかるのに対し、「不在者財産管理人」の選任手続きは2カ月くらいで完了させることができます。

 

「不在者財産管理人」に選任された人は不在者・申立人の双方と利害関係がない人であることが条件で、身内でない第三者が選ばれることも多いため、嫌がる人もいるのが実情です。

 

今回のケースではBさんの失踪から経過した月日は5年。吉村さんは、身内でない第三者が選ばれることを承諾し、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の申し立てを行いました。相続税の場合、申告が期限に遅れてしまうと、基本的に無申告加算税というペナルティが課されることになります。そのために、吉村さんが「不在者財産管理人」の申し立てをスピーディーに行ったことは、今回の相続の申告期限に間に合わせることができたため、賢い選択だったと言えます。
 

 

※本記事で紹介されている事例はすべて、個人が特定されないよう変更を加えており、名前は仮名となっています。

 

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不動産コラムニスト、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、家族信託コーディネーター®

日本女子大学卒。オフィスヨシイ 代表。現役で不動産取引も行う傍ら、不動産にまつわるコラムを執筆。賃貸、売買、用地仕入れ、不動産投資、不動産コンサルなど、不動産に関する業務を幅広く経験。実体験に基づく、地に足のついた、分かりやすいコラムが好評


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