大河ドラマ『青天を衝け』で再び脚光を浴びる渋沢栄一。2024年には新1万円札の「顔」になることも決定し、注目度は増す一方だ。そこで本記事では奥野宣之氏編訳の書籍「抄訳 渋沢栄一『至誠と努力』人生と仕事、そして富についての私の考え」(実業之日本社)より一部を抜粋し、渋沢栄一が実際に記した社会・発展・人生論を紹介していく。
『青天を衝け』渋沢栄一は見抜いていた…ダメな若者が言いがちな一言 ※画像はイメージです/PIXTA

渋沢栄一が送る「若者へのメッセージ」

■「元気者」が明治を作った

 

幕末は、薩摩だけではなく、他の諸藩の若者にも熱気が満ちていた。藩校の学生連中なんてじっとしていられず、「衣は骭(かん)に至り袖腕に至る」※2どころか、裸になるくらい元気と勇気にあふれていた。

 

その元気がだんだん集まって、最終的に明治という時代を作り出した。あの明治政府の中で、天皇を支えた人々は、こういう元気者の選抜組なのだ。

 

つまり、江戸時代に成長した人々が、ちょうどよく幕末の風雲に出合って「明治の聖代」を作り出し、このようにすばらしい繁栄を実現させた。

 

今の日本は文久・慶応時代の学生の元気が作り出したものとも言えるのだ。

 

※2 衣は骭に至り袖腕に至る……豪胆で向う見ずな様子

 

■勇気をもって猛進せよ

 

正しい行為だとわかっているのに「でも、失敗するのが怖くて……」などと言っている若者は、ぜんぜん見込みがない。

 

自分が正義と信じる限りは、あくまで前向きに、ドーンと行ってもらいたい。正義の心で進み「岩をも砕く鉄の精神を傾ければ、成し遂げられないことなんてない」という意気込みで行かなければならない。

 

この志さえあれば、どんな困難も突破できる。たとえ失敗することがあっても、それは自分の注意が足りなかったのであって、少しも心にやましいところがないのなら、かえって多くの教訓を得られる。

 

その結果、より強い志を養うことができ、ますます自信をつけられる。勇気を持って猛進することができる。

 

そして、次第に社会の中で立派な人物となっていく。個人としても、国家のひとつの礎としても、信頼できる人物となるのだ。