渋沢栄一が送る「若者へのメッセージ」
■「元気者」が明治を作った
幕末は、薩摩だけではなく、他の諸藩の若者にも熱気が満ちていた。藩校の学生連中なんてじっとしていられず、「衣は骭(かん)に至り袖腕に至る」※2どころか、裸になるくらい元気と勇気にあふれていた。
その元気がだんだん集まって、最終的に明治という時代を作り出した。あの明治政府の中で、天皇を支えた人々は、こういう元気者の選抜組なのだ。
つまり、江戸時代に成長した人々が、ちょうどよく幕末の風雲に出合って「明治の聖代」を作り出し、このようにすばらしい繁栄を実現させた。
今の日本は文久・慶応時代の学生の元気が作り出したものとも言えるのだ。
※2 衣は骭に至り袖腕に至る……豪胆で向う見ずな様子
■勇気をもって猛進せよ
正しい行為だとわかっているのに「でも、失敗するのが怖くて……」などと言っている若者は、ぜんぜん見込みがない。
自分が正義と信じる限りは、あくまで前向きに、ドーンと行ってもらいたい。正義の心で進み「岩をも砕く鉄の精神を傾ければ、成し遂げられないことなんてない」という意気込みで行かなければならない。
この志さえあれば、どんな困難も突破できる。たとえ失敗することがあっても、それは自分の注意が足りなかったのであって、少しも心にやましいところがないのなら、かえって多くの教訓を得られる。
その結果、より強い志を養うことができ、ますます自信をつけられる。勇気を持って猛進することができる。
そして、次第に社会の中で立派な人物となっていく。個人としても、国家のひとつの礎としても、信頼できる人物となるのだ。