渋沢栄一が憂慮した「実業教育の弊害」「社会の腐敗」
■悪いカネは悪い結果をもたらす
不正な行為によって手に入れたカネ、またはロクに苦労もせずに懐に入れたカネ。こういうのは、割がいいような気がするけれど、結局、長持ちするものではない。
使い道に関しても、だいたい悪用されがちで、その人に災いをもたらすケースも多い。
こういう話はいくらでも例がある。だから現実に目を配って富の価値を理解し、仁義・道徳を守って正しい富を集めるべきだ。
そして、そのカネを世の中のために使ってくれることを、心から望む。
■資本主義の落とし穴
実業教育だけを推し進めた結果、自分の富を増やそうという人がどんどん出てきた。成金も生まれた。ツキがよかっただけで大金を得た者もいた。こういったことが刺激や誘惑になって、誰でも一攫千金を狙うようになった。
こうして、ますます人々はこぞって富を増やす方に進む。その結果、富む人はさらに富を蓄え、貧しい人も富を狙おうとする。
仁義道徳は、旧時代の遺物であって、見向きもされない。世間の誰もが、頭だけで考えて一家のカネを増やそうと必死になっている状況だ。その結果、腐敗や混濁がはびこり、堕落・混乱に陥る――。
当然の話ともいえる。