商売人が『論語』を学ぶべき理由
■カネ儲けと仁義道徳とは一致する
孟子※は「カネ儲けと仁義道徳とは一致するものである」と言った。
だが、その後の学者がこの二つを引き離してしまったのだ。「仁義をなせば富貴から遠ざかる」「富貴になれば仁義から遠ざかる」とされてしまった。
その結果、商人はバカにされ、商売なんて一人前の男がやるべきことではない、とされた。商人の側も心がねじくれて、拝金主義の一点張りとなってしまった。
こういうことがあったせいで経済の進歩は何十年、いや何百年遅れたのだろうか。こんな風潮はだんだんなくなりつつあるものの、まだ足りない。
カネ儲けと仁義の道が一致するものであることを知ってほしい。私は『論語』とソロバンとを持って、このことを教えているつもりではあるが。
※孟子……中国・戦国時代の思想家。孔子の教えを引き継いだ
■道徳は常にひとつ
英語新聞の記者から「商業道徳」について意見を求められたことがある。商業道徳とは一体どういう意味なのか。商業だけの道徳なんてものがあるわけがない。
おそらくこの記者は「商売人はある程度、普通の人よりズルをするものだ」といった昔ながらのイメージ、つまり商人蔑視の感覚で言ったに違いない。もし特別な「商業道徳」があるなら、政治道徳・学者道徳・教育道徳もなければならない。そんなバカな話があるか。
もちろん商人は信用を重んじなければならないわけで、ある面では一般的な道徳と共通するに違いない。しかし、商人だけに適用される道徳なんてものはないのだ。