大河ドラマ『青天を衝け』で再び脚光を浴びる渋沢栄一。2024年には新1万円札の「顔」になることも決定し、注目度は増す一方だ。そこで本記事では奥野宣之氏編訳の書籍「抄訳 渋沢栄一『至誠と努力』人生と仕事、そして富についての私の考え」(実業之日本社)より一部を抜粋し、渋沢栄一が実際に記した金銭論を紹介していく。
大河ドラマで脚光・渋沢栄一が述べた「格差が進歩を生み出す」の真意 ※画像はイメージです/PIXTA

渋沢栄一が語った「国を豊かにするには」

■独立自尊と倨傲不遜

 

福沢(諭吉)先生が力説していた「独立自尊」について、私の解釈を述べておこう。


絶対的に、完全に人は独立自尊できるかというと、それはとても不可能だろう。そして、こういう感覚が身についていたら、どれだけ「独立自尊」を自らのモットーにしていても「倨傲不遜(きょごうふそん)」に陥らないで済むと思う。《略》

 

つまり「独立自尊」を信じる場合でも、常に相対的な視点を忘れないことだ。偏らず傾かず進んでいけば、社会の実態と上手くバランスをとっていける。

 

■「自助」だけでいいのか

 

国を豊かにするには、どうすればいいのだろう? 自分のことだけ考えていればいいのか。だが、それで国家の隆盛をいつまでも維持できるだろうか。つまり――、「自らを助ける」と「互いに助ける」。「自分を愛する」と「他者を愛する」。「自らを高める」と「他者を尊重する」。

 

自助と互助。もしくは自愛と他愛、自尊と他尊……。これはかなり研究すべきテーマだと思う。