建設会社だから語ることができる「ファミリー物件作りの難しさ」
前回、これからの不動産投資では、「ファミリー物件こそ勝ち筋」な理由を紐解いてきた。しかしながら、不動産投資業界ではファミリー物件を推すところは少ないようだ。それは、なぜだろうか?
「その大きな理由は、高い収益性が望めるファミリー物件を建てられる会社に限りがあるからです」と牛山氏。ファミリー物件は、広い間取りが取れる大きな建物にする必要があるため、消防法の規制が厳しい。したがって、耐火性の低い木造や鉄骨で建てることは経済的ではなく、必然的にほとんどがRC(鉄筋コンクリート)で建てられる。しかし、工場で製作された主要部材を組み立てる木造や鉄骨の建設と異なり、現場でイチから建物を作ることになるRCの建設では、高い技術や施工精度が必要となる。そのため、RCの建物を建設できる会社は限られているというのだ。
「弊社は、RC造に特化したコンパクトゼネコンであり、経験の蓄積が技術や施工精度の高さの裏付けとなっています」
ファミリー物件で「勝つための条件」とは
RCは一般的な木造に比べれば建設コストが高くなることや、25平米のワンルーム2戸の家賃より50平米の2LDK1戸の家賃の方が安くなりがちであるなど、ファミリー物件には不利な点もあるともいう。
「そのため、どうしても表面的な利回りは悪くなるのです。そこで弊社では、さまざまな工夫と徹底したコストカットを図っています」
その一つとして同社が活路を見出したのが、半地下だ。住宅の地下室は一定割合まで容積率に算入されない。そこで同社は地下室を効率的に施工できる工法を開発し、特許を取得。加えて、半地下でも明るい室内にできるような設計ノウハウを持っている。このため、地上部だけの建物と比較してフロアが一つ多く、よりボリュームのある建物を作れることで、利回りを改善することが可能なのだという。
しかし、地下室を作るには、地下水の問題がある。地下室を作ろうとすると地下水が出てくることが避けられず、それが建物の湿気やカビの原因となるため、入念な防水処理が必要となるのだ。それに対し同社は、溜め池やゴミ処理場などで使われている防水資材を地下全面に敷き詰めて、掘った地盤の周りに水の通らない不透水層を形成したうえでコンクリートを打つという大工事を標準で実施。同社規模の建設会社でその工事をできるところは少なく、技術面の強みといえるだろう。
「半地下でもいかに快適な住空間をいかに低コストで実現するか。それは非常にノウハウが求められるところで、弊社のようにRC専業で半地下の物件を多く手がけている会社でないと実現は不可能でしょう」
間取りや設備、内装などに高いクオリティが求められるのも、ファミリー物件の特徴だ。ワンルーム物件のように短期間で入居者が入れ替わっていくのではなく、ファミリー物件では入居期間が長くなる傾向が強いからだ。単身世帯向けのキッチンはお飾り程度でも良いかもしれないが、ファミリー向けのキッチンではそうもいかないだろう。
そこで同社は、床材や石材などの海外建材メーカーと直接取引のルートを開拓。中間マージンを除くことで、質の良いものを安価に仕入れることを可能とした。実際に、無垢のフローリングや大理石のキッチン天板なども、一般的な仕入価格の半額以下で調達。注文住宅やデザイナーズマンションのような見映えを演出できるため、周囲の賃貸住宅と比較して高めの家賃を取ることができている。
さらには、徹底的なコスト削減のために建設業界の慣行にも切り込んでいる。建設業界では一般的に、意匠設計士が建物の外観や内部をデザインし、そのデザインを実現できるよう建物構造が設計されている。それに対し同社では、効率的な建物構造を先に実現させ、そこに当てはまるように建物の外観や内部を検討するというエンジニアリングファーストな設計が行われている。そうすることで、土地のポテンシャルを最大限に引き出しつつも建設費は圧縮されたRC造の建設が可能になるという。
「弊社にはそれができる技術者がいるので、収益性の高いRCファミリー物件をプランニングできるのです」
土地の選定と企画から、設計、施工、建材の仕入などの全ての工程を管理し、コスト削減のための工夫をすることで、ファミリーが満足できる仕様のマンションを、好立地に低コストで建てることができる。逆にいえば、そこまでしないと不動産投資が成り立つレベルのファミリー物件はできあがらないともいえる。
「投資家目線でありながら、入居者さんにも長く快適に住んでもらえる。そのような『持って良し、売って良し』の建物を、できるだけローコストで建てる。そういった考え方を持った建設会社が作ったファミリー物件を手に入れることが、ファミリー物件による不動産投資を成功させるための答えだと思います」