大河ドラマ『青天を衝け』で再び脚光を浴びる渋沢栄一。2024年には新1万円札の「顔」になることも決定し、注目度は増す一方だ。そこで本記事では奥野宣之氏編訳の書籍「抄訳 渋沢栄一『至誠と努力』人生と仕事、そして富についての私の考え」(実業之日本社)より一部を抜粋し、渋沢栄一が実際に記した社会・発展・人生論を紹介していく。
『青天を衝け』渋沢栄一は見抜いていた…ダメな若者が言いがちな一言 ※画像はイメージです/PIXTA

渋沢栄一「形式に流れるな」「政府を当てにするな」

■はびこる形式主義

 

政治にスピード感がないのは、わずらわしくてくどくどした手続きをしたがるからだ。役人は形式的で物事の本質に立ち入らず、与えられた仕事を機械的にこなして満足している。

 

いや、役人だけではない。民間企業や銀行でもこういった空気がはびこってきているのを感じる。

 

「形式に流れる」というのは、元気で活発な新興国では少ないもので、長い間、風習を守ってきた古い国に多いケースだ。幕府が倒れたのも、これが原因だった。

 

「六国(りっこく)を滅ぼしたのは六国自身であって秦ではない」※1という言葉がある。幕府を滅ぼしたのは当の幕府、そのものであった。本当に強い木は大風が吹いても倒れないのだ。

 

※1 六国……中国・戦国時代の燕・趙・楚・韓・魏・斉のこと。秦に統一された

 

■政府を当てにするな

 

近頃、若者のあいだでチャレンジ精神が盛んになり、本領を発揮しようというムードが生まれているのはすばらしいことだ。だが一方、働き盛りの社会人のあいだで「現状維持」の空気が蔓延しているようでは、先行きが思いやられる。

 

独立不羈(ふき)の精神を発揮するには、現代のように政府だけが万能で、民間事業者が政府の保護を受けたくて恋々としている、といった風潮を一掃しなければならない。民間の活力を大いに高めて、政府の手を借りないで事業を発展させる――。そういう覚悟が必要だ。