対円以外は「米ドル一段高」目立つ展開に…注目ポイントは「資金還流・資金流出」

8/24~8/30の「FX投資戦略ポイント」

対円以外は「米ドル一段高」目立つ展開に…注目ポイントは「資金還流・資金流出」
(※画像はイメージです/PIXTA)

先週の為替相場では、米ドル/円を除くと米ドル一段高の動きが目立ちました。一体なぜなのでしょうか。FX開始直後から第一線で活動している、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏が解説します。

「8/24~8/30のFX投資戦略」のポイント

[ポイント]​

・先週は対円以外で米ドル一段高が目立った。米金融緩和見直しが関心を集めるなかで、米国への資金還流や、資源国、新興国から資金流出が拡大している可能性に注目。
・米ドル/円は先週米ドル上値重い展開となったのは、日米金利差と連動した結果。米ドル/円の今後の行方も、米金融政策をにらんだ米金利の動きがカギとなる。

対円以外で米ドル一段高が拡大

先週の為替相場では、米ドル/円を除くと米ドル一段高の動きが目立ちました。ユーロ/米ドルは一時1.17米ドルを大きく割り込み、年初来のユーロ安値・米ドル高値を更新しました。さらに目立ったのは、豪ドル安・米ドル高の動きだったのではないでしょうか。豪ドル/米ドルは年初来の豪ドル安値・米ドル高値を大きく更新し、一時は一気に0.71米ドル割れに迫る動きとなりました。

 

また南アフリカランド/円やメキシコペソ/円といった新興国通貨も大きく下落しました。これは米ドル/円がほぼ横這いとなるなかで、対米ドルでこれらの新興国通貨が大きく下落、裏返せば米ドル高が大きく進んだ結果でした。

 

このように、米ドル高が大きく広がったのは、米金融政策転換がテーマになっている可能性があるのではないでしょうか。米金融緩和見直し局面では、基本的には米金利上昇見通しのもとで、米国へ資金が還流し、資源国、新興国から資金流出が拡大しやすくなります。

 

先週公表された7月FOMC(米連邦公開市場委員会)議事録では、大半のメンバーが金融緩和の縮小、いわゆる「テーパリング」について、年内の開始を支持していたことが明らかになりました。このように米金融緩和見直しに注目が集まるなかで、米国への資金回帰、その一方で資源国や新興国からの資金流出が拡大して、米ドル高が広がっている可能性は注目されるところでしょう。

6月ごろから続いたユーロ安・米ドル高の流れに変化

個別の通貨ペアについてみてみましょう。ユーロ/米ドルは、6月ごろからユーロ安・米ドル高の流れが続いてきましたが、この動きは金融政策を反映する独米2年債利回り差の動きと一定の相関関係のもとに展開してきました(図表1参照)。米金融緩和見直しを織り込む形で米金利が上昇、独米金利差米ドル優位が拡大するなかで、米ドル高、ユーロ安が展開しているといえそうです。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表1]ユーロ/米ドルと独米金利差 (2021年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

先週の急激な「豪ドル安・米ドル高」の背景

続いて豪ドル/米ドルを見てみましょう。豪ドル/米ドルに、ユーロ/米ドルと同様に豪米の2年債利回り差を重ねてみると、先週の急激な豪ドル安・米ドル高の動きは、金利差からはかい離したものでした(図表2参照)。この動きをどう理解したらよいのでしょうか。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表2]豪ドル/米ドルと豪米金利差 (2021年1月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

豪ドル/米ドルは金利差以外で、鉄鉱石価格や中国株などとの関係に注目されることが少なくありません。豪ドルは代表的な資源国通貨とされていますが、そんな豪州の輸出で最も高いシェアを占めているのが鉄鉱石。そして、鉄鉱石の最大輸入国は中国です。以上のことから、豪ドルは鉄鉱石価格や中国株の影響を受けることがあるといえるのです。

 

今月に入り、鉄鉱石価格は暴落(図表3参照)。最大輸入国の中国の経済に対する不安が高まったことなどが影響していると考えられます。そして中国の株価、上海総合指数などは、先週何度か急落する場面がありました。

 

出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成
[図表3]豪ドル/米ドルと鉄鉱石価格 (2020年5月~) 出所:リフィニティブ・データをもとにマネックス証券が作成

 

米金融緩和見直しに注目するなか、資源国である豪州からも資金流出の可能性があり、そこに鉄鉱石価格の暴落や中国株急落などの材料も重なったことから、豪ドル/米ドルは金利差が示す以上の急落となったと考えられます。

 

先々週まで、豪ドル/米ドルは約1ヵ月、0.73~0.74米ドル中心の小動きが続きました。小動きが長く続くと、相場のエネルギーが溜まり、小動きのブレークにより溜まったエネルギーが発散され一方向に大きく動く傾向があります。先週の豪ドル/米ドル急落には、そのようなテクニカルな影響もあったのでしょう。

 

よって、経験的にはこれまでの小動きの下限、0.73米ドルまで当分は戻すことなく、豪ドル下落リスクを試す可能性がありそうです。

 

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