ロボットもできる仕事を人間がするから生まれる改善
最近、「AI(人工知能)に取って代わられる仕事」といった話題をよく耳にします。
ならば、わたしたちが大切にしている「コツコツと丁寧に、毎日決められたことをきちんとやる」仕事は、真っ先にAIに置き換えられてしまうのではないか。でも、佰食屋はそれを「あえて」やっています。
佰食屋が従業員にしてもらっていることは、「誰がやってもできること」です。極端に言ってしまえば、ロボットでもできること、なのかもしれません。肉は毎日同じ部位を取り扱いますし、毎日同じものを100食つくり、提供します。メニューには全部説明が書いてありますし、レジも3店舗全部同じ機種です。
年齢・性別・学歴・経験を問わず、誰がやっても、3ヵ月もあれば身体で覚えられます。
でも、毎日毎日同じことを繰り返していると、なにも考えなくても、自然と身体が動くようになります。とにかく「毎日100食売り切ること」に集中できます。すると、なにが起こるか。頭が空っぽになって、ほかのことを考えられる余裕が生まれます。そこがわたしたちの「狙い」なのです。
毎日同じことを繰り返すからこそ、些細な変化や違和感に気づくことができます。その違和感から生まれるのは、お客様が「もっと過ごしやすくなる」、あるいは自分たちが「働きやすくなるため」の小さな、でも価値あるアイデアです。
「傘の取り間違いを防ぐため、番号を書いた洗濯ばさみを傘につけて目印にするのはどうか」「店員に声をかけなくても好きなだけお茶を飲めるように、ボトルをさまざまなところに配置したい」「海外からのお客様は味噌汁を飲む際スプーンを使うようなので、最初からスプーンをお出しするのはどうか」など…。
本当に細かいところに気づいてくれるので、毎回感心しています。そのアイデアは、決して来店数と売上額といった定量的なものから答えを出すAIから、生まれるものではないでしょう。
誰でもできる仕事をAIでなく、人間がやっているからこそ、仕事はどんどんと洗練されていく。
すると、変化のない単調な環境に彩りが生まれ、みんながさらに楽しく、さらに余裕を持って働ける環境になるのです。そして、その余裕はお客様への心配りにもつながります。
中村 朱美
株式会社minitts
代表取締役
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