中国主要経済指標から占う今後の動向 (※写真はイメージです/PIXTA)

中国の7月の主要経済指標は前年比でプラスを確保するも、軒並み市場予想を下回りました。生産活動の鈍化、輸出の伸び悩み、洪水など悪天候要因、不動産投機の抑制、新型コロナウイルスの感染再拡大に対する対応などの要因が、程度は異なれど、各経済指標へ影響を与えたと見られます。年後半は景気鈍化に対し経済支援策による下支えが想定されます。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

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中国の7月主要経済統計:小売売上高、工業生産、固定資産投資は市場予想を下回る

中国国家統計局は2021年8月16日に7月の主要な経済統計を発表しました。工業生産は前年同月比6.4%増と、市場予想の7.9%、6月の8.3%を下回りました。

 

百貨店やスーパー、電子商取引(EC)などの売上高を合計した7月の小売売上高は8.5%増と、市場予想の10.9%、前月の12.1%を下回りました(図表1参照)。

 

日次、期間:2019年7月31日~2021年8月16日、小売売上高は月次 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国小売売上高(前年比)と新型コロナ新規感染者数 日次、期間:2019年7月31日~2021年8月16日、小売売上高は月次
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

なお、飲食店の収入は14.3%増で、6月の20.2%を下回りました。年初来の固定資産投資は年初来前年比10.3%増と、市場予想や前月を下回りました。内訳を見るとインフラ投資や製造業投資が前月を下回り、固定資産投資の伸びを抑えました。

どこに注目すべきか:中国、工業生産、固定資産投資、小売売上高

中国の7月の主要経済指標は前年比でプラスを確保するも、軒並み市場予想を下回りました。生産活動の鈍化、輸出の伸び悩み、洪水など悪天候要因、不動産投機の抑制、新型コロナウイルスの感染再拡大に対する対応などの要因が、程度は異なれど、各経済指標へ影響を与えたと見られます。年後半は景気鈍化に対し経済支援策による下支えが想定されます。

 

まず、工業生産が鈍化した背景は、7月の輸出がやや伸び悩んだこと、半導体不足による自動車生産への影響、河南省の未曾有の洪水被害などがあげられます。自動車生産は前年同月比で約マイナス16%となっています。

 

もっとも、洪水で操業停止に追い込まれた日系自動車企業などは生産を再開しており、回復も見込まれます。

 

固定資産投資は年初来前年比で10.3%増と、市場予想の11.3%増、前月の12.6%増を下回りました。内訳ではインフラ投資が4.6%増、製造業投資は17.3%増と、それぞれ前月の7.8%増、19.2%増を下回りました。

 

工業生産など生産活動の鈍化には、これまで述べてきた輸出の反動や、悪天候などが関連していますが、不動産投資は中国当局の不動産投資に対する抑制姿勢を反映した面が考えられます。これを資金調達の面から見ると、中国社会全体の7月の資金調達額は1兆600億元と、市場予想や前月の3兆6700億元を大幅に下回りました(図表2参照)。

 

月次、期間:2017年1月~2021年7月、マネーサプライはM2、前年比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国社会全体資金調達額とマネーザプライの推移 月次、期間:2017年1月~2021年7月、マネーサプライはM2、前年比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

例年7月は資金調達額が減少する傾向はありますが、今回の減少は想定を超えていると見られます。また、中国人民銀行が預金準備率を引き下げた効果が見えない点は気がかりです。資金調達が減少した背景は国債、地方債などの発行が減っていることと、不動産投資への抑制策が伸びを抑えたと見られます。財政政策は21年後半にある程度余裕があることから、景気下支えのため拡大も想定されますが、不動産投資の抑制方針は当面維持されそうです。

 

投資の減速はある程度想定される一方、この減速分を個人消費が相殺するまでに小売売上高が伸びていないという課題は残ります。注目点として個人消費の下支えとなっていたと見られる失業率(調査)の低下が7月は上昇した点です。もっとも、過去この指標は7月に上昇を示すパターンも観察されるため、今後の動向の見極めが必要です。

 

別の注目点は中国当局の新型コロナ対応です。中国は新型コロナの感染者が出れば強力な都市封鎖を導入するため経済活動が急激に抑制される傾向があります。例えば飲食店の収入は7月が14.3%増と、6月の20.2%を下回りました。中国は世界に先駆けて新型コロナを封じ込めた成功体験があるからか、感染者の数からは想像もできない厳格な活動制限を特定地域に導入する対応をとってきています。新型コロナの感染再拡大は中国景気の下押し要因となる可能性もありそうです。

 

年後半、中国当局は的を絞った財政政策などで景気下支えをはかると思われますが、不動産市場を過熱させないなど制約が多い中での対応が求められそうです。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国主要経済指標から占う今後の動向』を参照)。

 

(2021年8月17日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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