最後の日本人が永眠すれば、財政赤字も…
極端な話ですが、頭の整理のために、最後の日本人が永眠するときのことを考えてみましょう。ひとりっ子とひとりっ子が結婚してひとりっ子を産むと、いつかは日本人が1人になり、その子が永眠すると日本人がいなくなります。
その子は先祖代々の相続によって2000兆円の個人金融資産を相続しているわけですから、その子が永眠するとそれが国庫に入ります。日本政府の借金をすべて返済できる金額が国庫にはいるので、財政赤字は一瞬で消えるわけです。
もちろん、実際に最後の1人になることはないのでしょうが、この話は頭の整理に役立ちます。
第一に、日本政府の借金が巨額でも破産するとは限らない、ということです。「政府の借金が巨額なので、いつかは破産するはずだ」と漠然と考えている人は、そうでない可能性があることをしっかり認識していただければ幸いです。
第二に、財政赤字は世代間不公平ではない、ということです。財政赤字だけを考えれば世代間不公平なのでしょうが、遺産のこともあわせて考えれば、世代間不公平は存在しません。
政府が財政赤字を減少させ、後の世代の負担を減らすために増税したとしても、我々の世代が預金を引き出して納税するだけ。次世代に遺す遺産が減っておしまいとなり、「増税次世代の受け取る遺産」と「次世代の払う税」の、ネットで見た次世代の負担は減らないのです(拙稿『日本政府の財政赤字…国が迫る「大増税計画」では埋まらない、世代間不公平の問題』参照)。
10年後、少子高齢化で増税が容易に
そしてもうひとつ、財政赤字を拡大する要因として捉えられる場合が多い、少子高齢化の問題です。しかし筆者は天邪鬼ですから、これが財政赤字を縮小すると考えています。
いま、財政が赤字なのに増税ができていない最大の理由は「増税で景気が悪化すると失業者が増えてしまうから」ということでしょう。失業者が増えると失業対策の公共事業が必要になったり、景気対策としてバラマキ減税が必要となったりしかねませんから。
しかし10年もすれば、少子高齢化で本格的に労働力が不足する時代が来るでしょう。そうなれば、増税して景気が悪くなっても失業者が増えない、という時代になるはずです。実現すれば、気楽に増税できるようになるでしょう。
さらにいえば、労働力不足で賃金が上がり、インフレが心配な世の中になるかもしれません。そうなれば、「増税によって景気を悪化させてインフレを抑え込む」必要が出てくるかもしれません。
常識的には、インフレを抑えるために景気を悪化させるのは日銀の金融引き締めなのでしょうが、政府が巨額の借金を抱えているときに金利が上がると利払い負担が大変ですから、政府から日銀に「政府が増税で景気を抑え込むから、利上げはしないでほしい」と要請するようになるわけですね。
今回は以上です。なお、本稿は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する組織等々の見解ではありません。また、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。
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塚崎 公義
経済評論家
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