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耐久性、防水性、遮熱性…塗料の「性能」が台なし
■2回塗りで工事を終えてしまう
外壁塗装や屋根塗装は下塗り・中塗り・上塗りの3回塗りが基本です。下塗りは下地を補強し、仕上げ塗料と下地との密着性を高める働きをします。
中塗りは、下塗り用塗料の色を消して、上塗り用塗料との密着性を高めるために行います。中塗り・上塗りと仕上げ塗料を2回以上塗らないと、塗料がもつ防水性や遮熱性などの性能が十分に発揮されず、すぐに塗料が剥がれてしまったり、下地が劣化してしまったりして問題が生じてしまいます。
上塗りは中塗りで生じた色ムラや気泡を改善する役割があります。しかし、悪質な業者は下塗り、上塗りの2回塗りで工事を終えて工期を短縮し、塗料費用をごまかそうとする場合があります。そのため、見積書をしっかりとみて、3回以上の塗装回数があるかどうかをしっかりとチェックしてください。
なお、2回塗りのみでOKな塗料もありますので、塗装を開始する前に確認してください。
■塗装前の洗浄を適当に済ませる
屋根塗装や外壁塗装は、塗装する前に高圧洗浄機で汚れやカビなどをしっかりと落とさないと適切な工事が行えません。汚れやカビの上から塗装してしまうと、塗料がすぐに剥がれてしまい、塗料の性能がしっかりと発揮されず、すぐに塗装し直すことになってしまいます。
悪質業者は工期を短くするために、この工程を適当に済ませてすぐに塗装工程に移ろうとすることがあります。塗料の性能が十分に発揮されないので、しっかりと洗浄してもらうようにしてください。
塗装後トラブルの多くは「塗装前の処理」が原因
■下地処理が不十分
下地処理が適当なことも危険です。下地処理とは外壁材や屋根材のひび割れや欠損、サビなどを修繕して建物の劣化を防ぎ、塗装できる状態にすることを指します。
下地調整が適当だと、ひび割れや欠損、サビの上から塗料を塗っていくことになるので、そこから塗料が剥がれてきて雨水の浸入につながります。塗装後のトラブルの多くは下地処理が不十分であったことが原因であることで発生しているといわれるほど、下地処理は重要な工程です。そのため、塗装の前に外壁材や屋根材の不具合をしっかりと直してもらう必要があります。
■塗料を水で薄める
悪質な業者は塗料に水を入れて、塗料代を浮かせようとすることもあります。塗料には適切な濃度があります。その濃度で塗っていかないと、防水性や遮熱性などの塗料の性能が十分に発揮されなくなってしまいます。例えば、耐用年数が10年前後の塗料なのに水増しされて工事をされると、適切な耐久性が発揮されず、3年程度で塗料が剥がれてきてしまうこともあります。
■乾燥時間を十分に取らない
塗装工事をする場合、塗料が乾燥してから次の塗装工程に移っていく必要があります。しかし、悪質な業者は工期を短くしたり人件費を削減したりという目的のために乾燥時間を十分に設けず、中塗りや上塗りをしていくことがあります。乾かないうちに塗料を重ね塗りすると、先に塗った塗料が剥げてくることがあり、適切な性能が発揮されなくなってしまいます。中塗りや上塗りをするときは十分に塗料が乾いてから行う必要があることを覚えておいてください。
雨等で工期が伸びてしまい次の施工が迫っている場合は、塗装の後半のプロセスで手抜きが行われるケースがあります。
■助成金を受け取れないケースも
悪質な業者は塗装工事の契約を取るために「助成金が受け取れる」と言ってくることがあります。自治体から助成金や補助金が出るなら、活用したいと思うかもしれません。しかし、国が定める外壁塗装向けの助成金・補助金制度はなく、市町村の制度を利用することになります。
しかし、市町村側の予算が限られており、すぐに申し込みが打ち切られてしまうこともあります。「助成金が利用できる」と言われてその気になって契約をしたけれど、実際は活用できなかったというパターンもあるので注意が必要です。また「火災保険が適用できる」と断定的に言ってくるケースにも注意が必要です。
手抜き工事をする業者は、「見積もり」の時点で適当
優良業者に工事を依頼したいと思うのは当然ですが、素人が業者の良し悪しを判断するのは難しいところです。しかし、工事に取り掛かってからでは手遅れです。手抜き工事を防ぐためには、早い段階で見抜く必要があります。そこで、見積書からどのような業者なのかを見抜くことも大切になってくるのです。
塗装面積を算出するには、業者が現地調査を行い、実際にスケールなどを使って計測する必要があります。扉や窓など、塗装の必要のない部分を差し引いた面積になり、当然のごとく細かい数字になります。
ただし、業者は材料のロスを考えてキリのいい数字にしてくることがあります。その場合、上乗せされるのは実際に計測した数値に1割、多くても2割程度がいいところ。それ以上の数字が入っているようなら注意が必要です。
こうした不正を見抜くためには、自身も調査に立ち会って、施工数量や内容を把握しておく必要があります。調査時に施主の同行を促さず適当な見積もりを出す会社では、まともな工事をするはずはありません。
見積書の項目では、作業工程をひとまとめにして「XX一式」と記載されることがあります。少量の単位をまとめたよく見かける表記ですが、あまり「一式」が多く使われている場合は注意が必要です。曖昧な表記でごまかして、「その作業は一式に含まれていない」と後から別で費用を請求する業者もあるからです。必要のない作業費用を上乗せされていることもあります。一式という表記を見たら、何がどれだけ含まれているのか確認してください。
キャンペーン中、モニター価格…「謎の値引き」は罠
工事費用を安く抑えたい人にとっては、値引き表記のある見積書は魅力的に映るかもしれません。しかし、根拠の分からない値引きには注意が必要です。よく用いられるのが、「キャンペーン中」「モニター価格」などの釣り文句です。あらかじめ見積もりを割高に設定しておいて、そこから値引きを行って結果的に相場と変わらなくするという手法を使っている場合があります。「足場代サービス」というのもあり得ないサービスです。
この場合、足場代が別の項目、例えば塗料代や諸経費に加算されている可能性がありますから、ほかの項目の金額が高くなっていないか注意してください。覚えておきたいことは、「正当な割引には根拠がある」ということ。適正な価格になっているのかを見定めることが一番大切です。あまりに過度な割引設定をしている業者は、再検討したほうがいいかもしれません。
見積書は専門用語が多く使用されていて、軽く目を通したくらいでは理解しにくいものです。つい金額ばかりに目を向けてしまいがちですが、工事内容と金額が大きくかけ離れている業者を選ばないようにしたいものです。
安さだけを追い求めた結果、手抜き工事をされてしまっては本末転倒です。大事なのは、相見積もりをして適正価格を知ることです。基本的な項目を理解し、単価の相場を把握して比較することです。そして、疑問に思うことがあればすぐに業者に尋ねるようにしてください。
輿石 雅志
株式会社ドアーズ 取締役社長
外壁診断士、外壁アドバイザー