ぼったくるためワザと「複雑な見積書」を作る業者も…
外壁塗装は住宅ごとにオンリーワンの作業を施すため、見積もりを取って、詳細な費用を確認する必要があります。しかし実際に見積書を見てみると、塗装そのもの以外の項目もたくさんあるうえに専門用語がちりばめられており、分かりにくいと感じる人がほとんどではないでしょうか。あえて分かりづらい見積書を作り、不当な費用を紛れ込ませる業者がいるのも事実です。
そこで、隠された悪意や不誠実さを見抜いて納得のいく外壁塗装が依頼できるようになる、上手な見積もりの取り方と見積書を見るときのポイントを説明します。
見積もりは複数取るべし…「3~4社」がベスト
●「相見積もり」を取る
⇒見積もりを取るときに必ずしてほしいのが、「相見積もり」です。これは、複数の業者にまったく同条件の見積もりを依頼すること。1つの業者だけに依頼すると比較対象がなく、渡された見積もりを確認しても、適正なのかあるいは高過ぎるのか安過ぎるのかは見当が付きません。しかし、相見積もりを取れば業者ごとに比較できるため、不審な業者をすぐに割り出せます。どんなに信頼できる業者であっても、相見積もりは取ってください(【⇒画像を見る:「金額の目安」一覧】)。
相見積もりを依頼する業者の数は、3~4社くらいに抑えてください。2社だけでは比較対象として少な過ぎますが、5社以上になると見積もり内容が重複するうえ、その割に連絡の手間ばかりが増えてデメリットが大きくなるためです。
心がけてほしいのは、相見積もりの内容を他社に教えないことです。なぜなら、他社の見積もりを知った業者はその金額よりも安くして契約を取ろうとする可能性があるからです。見積もりはその業者が無理なく作業できる金額を提示しているものなので、そこから安くしたらどこかの工程が手抜きになったり飛ばされたりするかもしれません。相見積もりで得た情報は、あくまで自分自身の比較検討のための利用にとどめてください。
実測に来てくれたら「信用できる業者」
相見積もりを取ってデータを比較すると、塗装面積にバラツキが見られることがあります。これは、きちんと実測していない業者がいるためです。坪数からおおよその塗装面積は出せるので、その数値をそのまま見積もりに載せているのです。
しかし実際の住宅は階数や建っている土地の形状で塗装面積に違いがあります。さらに、塗装面積から除外される窓や玄関などの開口部も住宅ごとに数や広さが異なります。だからこそ外壁塗装はオンリーワンの作業になるのですが、それを度外視して坪数の概算だけで見積もりを出す業者は手抜きをしているといわざるを得ません。
正確な塗装面積を知る方法として、住宅を建てたときの建築図面から計算することも可能ですが、プロに測ってもらうのが一番です。つまり、見積もりを取ったときに実測に来てくれた業者が信用できる業者であるといえます。
工事総額の15%を超える「その他、諸経費」はあやしい
●諸経費の内訳については遠慮なく質問する
⇒工事そのものに関わる費用以外のすべてが諸経費に含まれるため、内容は多岐にわたりますが、大きく分けると「現場経費」と「一般管理費」の2つに分かれます。先に列記した費用以外に、現場経費には作業車両のガソリン代や作業工程を記録する写真代などが、一般管理費には広告宣伝費や事務所家賃などが含まれます。
とくに一般管理費は、企業の継続に必要な経費であり明確な内訳を出すのは容易ではありません。そのため、見積書には「その他」とか「諸経費」としか書かれていないケースもよくあります。必ずしも悪意があって「その他」と書いている訳ではないので、内訳を書いていない場合は遠慮なく質問してください。それに誠意をもって回答してくれる業者は、工事も真面目に行ってくれるはずです。
ただし、諸経費の目安は工事総額の5~15%程度。これを大きく超えている場合は、不当な費用を上乗せしている可能性があります。あやしいと感じたら詳しい説明を求めてください。
「一式」や「式」をよく使う業者はかなり疑わしい
●「一式」という記載が多い見積書には要注意
⇒見積書の項目が多いとチェックが大変ですが、それではシンプルにまとめてあるほうがいいのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。業者によっては作業内容を「一式」とか単位を「式」などと書いて、ざっくりとひとまとまりにした工程の見積もりを出すところもありますが、このような業者は疑ってかかるべきです(【⇒画像を見る:こんな見積書には要注意】)。
なぜなら、単に「一式」では、作業や資材にかかる費用がまったく分からないからです。同じように、外壁以外の補修にかかる付帯工事費をひとまとまりにしてしまう業者にも気をつけてください。付帯工事費の内訳が書かれていないということは、頼んでいない作業の費用が含まれていても分からないということです。もしかしたら本当は必要ない作業や資材まで紛れ込ませて、費用を上乗せしているかもしれません。「塗装工事一式」とだけ書いてあったり、塗料や足場の単位が「式」になっていたりしたら要注意です。
信用できる業者なら、外壁塗装の項目をきちんと「高圧洗浄」や「塗装」というように分けていたり、単位を「m2」で書いていたりします。また付帯工事費は、どこにどのような資材を使って作業を行うか細かく書いてくれるはずです。
とくに、「足場設置」「下地処理」「下塗り」「中塗り・上塗り」は外壁塗装の柱となる工程なので、見積書にも分けて書くのが基本です。この4つの工程を見積書にそろえていない業者は、誠実さに欠けるところがあるかもしれません。
塗料の商品名とメーカー名が記載されているか塗料の商品名とメーカー名がきちんと書かれているかどうかは、重要なチェック項目です。
塗料はグレードが高いほど高価になりますが、同じグレードであっても商品ごとに価格は違うからです。信用できる業者なら少なくとも商品名は見積もりに書いてくれます。見積もりに「シリコン塗料」のようなグレードしか書いていない場合は、なんという商品を使うのか質問してみてください。
なかにはオリジナル塗料を使うという業者もいますが、これは品質が悪いか割高のものが多いため、あまりオススメできません。
日本では、大手メーカーが塗料を大量生産しているため、品質が良く手頃な価格の商品が流通しています。割高なオリジナル塗料を使うメリットはさほどないので、業者の口車に乗せられないよう気を付けてください。
「10万円以上の値引き」は罠。総工事費を見ると…
●大き過ぎる値引きに要注意
⇒キャンペーンやモニターなどと称して、10万円単位の大幅な値引きがされている場合は注意が必要です。そこだけを見ると得をしているように感じるかもしれませんが、ほかの項目もくまなくチェックすると、相場より高額な見積もりになっている項目を見つけられることがあります。
また、諸経費に不当な費用を入れて簡単には分からなくしてしまっている可能性もあります。値引きでお得感を与えて判断力を鈍らせ、契約を取ってしまおうという業者の得意な手口です。このような値引きがされている見積もりは、結果的に総工事費が相場と同等だったり、相場より高額になっていたりすることがほとんどです。
実際のところ、塗料や足場の価格、人件費などは金額が決まっているので値引きはほとんどできません。値引きできるところといえば、多くても総工事費の15%ほどしか占めない諸経費くらいですので、10万円以上も値引きをしたら業者の利益はとても少なくなってしまいます。この点から考えれば、大幅な値引きは明らかにあやしいと分かると思います。
輿石 雅志
株式会社ドアーズ 取締役社長
外壁診断士、外壁アドバイザー
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