具体的な相続手続きはどのようにすればよいか?
仮想通貨(暗号資産)はインターネットで取引される電子データであるため、相続人にとってその存在がわかりにくくなっています。相続人が仮想通貨を見つけられなければ、大切な財産が承継されずに失われることさえあります。
ここでは、亡くなった人が持っていた仮想通貨を探し出す方法と、仮想通貨の相続手続きを紹介します。
■あらゆる方法で仮想通貨を探し出す
仮想通貨を探し出すには、まず、故人が生前に「仮想通貨で儲かった」とか「損をした」とかいう話をしていなかったか思い出してみます。
ほかには、故人が残した次のようなものも手掛かりになるでしょう。
・銀行の入出金記録(仮想通貨の購入資金の送金、売却代金の入金)
・郵便物(取引所の口座にログインするための情報が書かれた用紙など)
・ボールペンなどのノベルティ(取引所から粗品としてもらった可能性がある)
・パソコンやスマートフォンにある取引ツール
・ハードウェアウォレット(仮想通貨を保管する専用端末)
このように、あらゆる方法で仮想通貨を探し出すことが相続手続きの第一歩となります。
しかし、銀行や証券会社とは異なり、仮想通貨の取引所は名前から仮想通貨を扱っていることを連想しづらい場合があります(日本にある主な仮想通貨取引所の名称は下記を参照してください)。
また、相続人がハードウェアウォレットを見つけても、仮想通貨が保管されていることに気がつかないかもしれません。
[日本の主な仮想通貨取引所(仮想通貨交換業者)]
・Coincheck(コインチェック)
・bitFlyer(ビットフライヤー)
・DMM Bitcoin(DMMビットコイン)
・SBI VC Trade(SBI VCトレード)
・TAOTAO(タオタオ)
・GMOコイン
(順不同)
■取引所にある仮想通貨の相続手続き
故人が取引所(仮想通貨交換業者)を通じて仮想通貨を取引していた場合は、相続人が取引所に連絡すれば相続手続きができます。
取引所の連絡先は、郵便物があればそれを手掛かりに、取引所の名前だけがわかればインターネットで検索して確認します。
取引所にある仮想通貨の相続手続きは、おおむね次のような流れで進められます。少し前までは取引所ごとに取り扱いがまちまちでしたが、現在は手続きの統一が図られています。
1.相続人の代表者(代表相続人)が取引所に故人の死亡を届け出ます。
2.取引所から死亡日現在の仮想通貨の残高が記載された「残高証明書」が送られます。
3.代表相続人は「残高証明書」を確認して、相続する旨を取引所に届け出ます。
4.取引所は故人の仮想通貨を売却し、売却代金を代表相続人の預金口座に送金します。
取引所にある仮想通貨はそのまま引き継ぐのではなく、日本円に換金してから代表相続人の預金口座に振り込まれることになります。
預貯金や株式などの相続手続きと同様に、届け出には次の書類が必要です。詳細は取引所の指示に従うようにしましょう。
・住民票除票など死亡の事実がわかるもの
・戸籍謄本、法定相続情報一覧図など相続関係がわかる書類
・代表相続人の本人確認書類
・取引所所定の届出書類
・相続人全員の印鑑証明書
・(必要に応じて)遺言書、調停調書、審判書
■取引所以外で保管されている仮想通貨の相続
パソコンやスマートフォンのウォレットやハードウェアウォレットなど、取引所以外で保管されている仮想通貨の相続は、どこかに届け出る必要はありません。金庫に入っている現金を相続するのと同じと考えればわかりやすいでしょう。
ただし、端末のパスワードとウォレットのパスワードを解除する必要があります。いずれかのパスワードがわからなければ仮想通貨を引き出すことはできません。