※画像はイメージです/PIXTA

かつては広い庭に平屋建ての家が主流だったニュージーランドも、移民による人口増加、土地・住宅の不足で、住宅事情が大きく変化しています。不動産価格が上昇するなか、コロナ禍で借り手が見つからず、よい物件を手放すオーナーも散見されるため、意外な投資チャンスが見つかるかもしれません。オークランド在住で不動産会社を経営する筆者が、現地でしか掴めない不動産事情をレポートします。

時代とともに、住宅の敷地面積はどんどん狭く…

ニュージーランドの物件は100万NZドル以下であればお得だという記事を7月に掲載しましたが(『価格上昇続くNZ不動産…「100万NZ$以下ならお得」の感覚』)、本稿では、住宅価格が上昇しているニュージーランド国内において、商業都市として栄えるオークランドの住宅事情の変化をご案内したいと思います。

 

筆者が移住してきた1990年代後半、オークランドのシティー中心では、高層アパートメント建設が盛んでした。

 

もともと大学生の住居は、郊外の一軒家でシェアホームとして暮らすパターンが多かったのです。金曜の夜になるとたびたびパーティが開催され、学生たちはビールを片手に夜中まで大騒ぎ。近隣住民からはたびたび苦情が寄せられていました。しかし、試験時期後のパーティに限っては、大目に見る寛大さも…。いかにもこの国の国民らしい、懐の深さを感じさせる対応です。

 

ところが、高層アパートの建設が進むにつれて学生たちの流れは一転。もちろん、いまもシェアホームに住む学生はいますが、学生の大半はリッチな留学生であるため、彼らの多くは高層アパートへ住み替えました。同時に、資産家による投資運営とも重なり、高層アパートは高い経済効果を生み出しました。

 

そんな時代が過ぎ、さらに移民の数が上昇すると、今度は土地不足・住宅不足が課題となりました。土地は高騰が続き、同時に分割・細分化されていくことになります。

 

もともとニュージーランドの典型的な家は、1000平方メートルぐらいの土地に、3LDKの平屋建てというスタイルでした。庶民的な家でも庭が広く、子どもたちはラグビーボールを追いかけ、サッカーやクリケットなども楽しんでいました。

 

ところが、時代が変化するにつれて土地の分割が進み、500平方メートルほどの土地に4~5ベットルームの2階建てという住宅が増えてきました。

 

しかし、それでもなお土地が足りず、現在は1000平方メートル程度の土地に、5~6戸のタウンハウスの建てるのが主流となり、時代の変化を感じます。

「理想のライフスタイル」とのギャップも明らかに

住宅の平均価格が優に100万NZドルを超えるオークランドでは、100万NZドル以下の予算しか持たない人たちは、①タウンハウスを購入する、②オークランド市内から1時間かかる郊外の住宅地を購入する、③サイズが広くても古い家の購入をする、の3つしか選択肢がなく、頭を抱えてしまうファーストホームバイヤーも多くいます。

 

新築でモダンな作りのタウンハウスの場合、狭い住宅に慣れているアジア人は「100%希望には合致しないが、古い家はイヤだし、郊外の住まいは現実的ではないから」といって購入します。

 

しかし、地元住民であるKIWIたちの感覚は、そんなアジア人たちとは異なります。子どもがいる家庭は「広いリビング」と「芝生のある庭」の2つが不可欠なのです。

 

リビングの狭いタウンハウスを目の当たりにし、茫然として引き返すファミリー。なかには「子どもたちが走り回るスペースはどこにあるんだ!」と声を上げる人もいます。それに対し、われわれ不動産業者は「近くに公園があるので、そこで遊んで下さい」といいたいところですが、なかなか理解が得られないため、口を閉ざすのです。

 

1000平方メートルの土地に建つ3LDKでも「狭い」と感じる現地の人たちは、この現実に落胆されていることでしょう。

 

こうなっては、オークランドを出て地方都市で生活するしかない…と考えるファミリーも増えています。悲しいですが、現実はなんとも厳しいのです。

 

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