突然の介護でケアマネの情報はなかった
●「問題のあるケアマネもいますよ」
ただ、ケアマネの吉岡さんをはじめ、介護サービスで来てくれた人たちは、本当によくやってくれました。あとで振り返ってみても、ケアプランは妥当な内容でした。サービスを提供してくれた人たちのケアのスキルもたしかなことがわかりましたし、落ちこむ父を笑わせて元気づけたりもしてくれました。その仕事ぶりを見て「自分も頑張らなければ」と思ったものです。
そんなこともあって、父の葬儀を終えて気持ちの整理がついたとき、介護サービスで来てくれた人たちに感謝の思いを伝える手紙を送りました。
とくに、そのなかのひとり、介護用トイレや車椅子など用具の追加があってたびたび来訪していた福祉用具レンタル会社の井口さんは、私とウマが合うというか、話がしやすく、食事に誘って直接、感謝を伝えたのです。そのときに聞いたのが、冒頭に記したひと言です。
「運が良い」といわれたことには、少なからず驚きました。私は吉岡さんの仕事ぶりに満足していたせいか、ケアマネの誰もが、そのレベルの仕事をしてくれるものだと思いこんでいたのです。しかし、井口さんは「そうとは限りません。問題のあるケアマネもたくさんいますよ」というのです。
●頼れるケアマネに当たるかは運しだい
じつは、井口さんと話をした時点で、私はケアマネジャーがどのような存在なのかを知りませんでした。いきなり父の介護が始まり、調べる余裕がなかったのが実情です。井口さんは「あくまで私の解釈ですが」と断ったうえで、ケアマネの存在をスポーツチームの監督に例えながら説明してくれました。
「スポーツチームの監督は、チームを勝利に導くのが仕事ですよね。勝利のためのプランを練り、それに必要な選手を起用して思惑どおりに活躍すれば勝利する。それができるのが名監督です。そのいっぽうでプランは的外れなうえ、良い選手は集められず、起用法も間違ってばかりで勝てない監督もいる。介護におけるケアマネジャーの役割もそれと同じ。介護の目的は勝利ではなく、サービス利用者やその家族がより良い介護生活を送ることですが、そのために的確なケアプランをつくり、活躍してくれるサービス提供者を起用すること。それができるのが良いケアマネですが、できないケアマネも少なくないんです」
井口さんにはさらに、担当ケアマネがどのようにして決まるのかも聞きました。
「地域包括支援センターに連絡がいくわけですが、その電話をとったケアマネがそのまま担当になるケースもありますし、その人の担当枠がいっぱいの場合は、枠が空いているケアマネに担当を振ることもある。また、そのセンターと取引のあるケアマネ事業所の人を担当にすることもあります」