介護中は介護される人を中心にまわる
■「自由を奪われるストレス」が介護者を蝕むしばんでいく
介護をつづけていると、精神的に追いつめられていきます。さまざまな原因がありますが、大きな要素として“自由を奪われる”ことが挙げられます。
介護中はほとんどの時間が介護される人(親)中心にまわるようになります。
まず、起床の時間に合わせて起き、ケアが始まります。排泄の介助や洗顔、歯磨き、看護師の指示がある場合は体温や血圧を測ったりもします。
そして朝食、必要があれば服薬。その後も昼食、夕食と時間どおりに用意し、そのあいだには病院に連れて行ったり、介護サービスが入ったりもします。就寝前にも一連のケアを行ないますが、それで終わりではなく、その後も必要があれば呼び出されてケア。介護される人に認知症の症状がある場合は、それが深夜や早朝であってもくり返されます。
仕事をもっている介護者も同様です。デイサービスに行ってもらう日も、朝は一連のケアをし、デイサービスのお迎えを待つ。会社に行って仕事をしていても、頭の隅にはつねに親のことがあるわけです。デイサービスが終わって帰宅するときも、できれば家にいたほうがいいので、仕事は早めに切り上げるようにする。そして夜は家でケア。そんな日々がつづくのです。
介護をする前、つまりふつうの日常を送っていたときは、すべて自分の都合で動けていたはずです。買い物などで外出するときも、思い立ったときに行けました。しかし、介護中は勝手に家を出ることはできません。とくに、訪問介護などのサービスが入っているときは、留守にするわけにはいかないわけです。このように、つねに親のケアのことが頭にあり、自由に行動できないのは相当なストレスになります。
もちろん、そのストレスを工夫によって緩和する方法はあります。たとえば、家の鍵を入れるキーボックスの利用。暗証番号で開閉できるボックスで、これを玄関付近の目立たないところに設置します。サービス事業者にこの場所と暗証番号を伝えておけば、不在にしていても家に入ってケアをしてくれるというわけです。
もちろん、これはサービス事業者の人たちへの信頼感があるからこそとれる方法です。さらにいえば、要介護の親をひとりきりにし、サービスが入るときに家を空けるという負い目があって、自由を得た気分にはとてもなれません。この状態がずっとつづくのです。